いつも通りの退屈な日常を送る。正直、こんな生活には飽き飽きしていた。死んでも構わないと、何度思ったことか。 俺は死んでいるはずの人間だ。こんなのうのうと生きる意味もないんだ。葵に言われた。あんたは楽しいか、って。 その時、俺はこう答えた。 ――この世界はつまらないよ、って。 その時は自然と笑っていた気がする。笑うって嫌いなんだ。無理して笑うことはないのに、笑わないと葵は悲しむから。 笑い方なんかとっくに忘れたよ。 「生きる価値も失ったか、司」 静かにそう呟いた者の言葉は誰の耳にも入らない。凛と呟いた者は、男性でも女性でもないように思われる。 黒いコートに身を包んだ者はフードを外し、崩れた髪をばさばさと首を横に振り、戻した。 銀色の髪に、金色の瞳を持つ少年……のような顔立ちをした者、少年は司を上から眺めるように見つめる。 「お前は不幸を背に背負っているようなもの。この世に生きていれば不幸が身にまとう」 「それを助けることが出来るのはほかならぬ、僕のみ」 「君がそれを望むなら、いや、望まないだろう」 「君を大切に思う者がそれを望むのであれば」 ――鎖を断ち、新たに繋いでやろう |