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 揺れてからまだそれほど経たないが、外でネオの見張りをしていた男たちがなにやら話をしていた。ネオはあまりに暇な時間に飽き飽きしていたせいか、その話に耳を傾けた。その言葉はまるでネオに聞かれないように小さな言葉でひそひそと話していた。
「聞いたか、あの話」
「ああ、聞いたぜ。あの国の話だろ?」
 ――あの国? 興味を引かれ、そのまま耳を傾ける。
「あんな良い国を潰すことはないだろうに」
 つぶす?
「ああ、上には賞金首を匿った罪ってことになるらしいぜ」
 ……それって、まさか。
「女人国が一つ減るのか」
「噂は本当だったな。悪魔の化身の噂は」

 あ く ま?

「あの女は間違いなく死刑か」
「いや、情報を聞き出したいらしいから」
「おい!」
 ネオは思わず身を乗り出し、その男たちに叫んでいた。まずい、そんな顔で振り返った男たち。ネオは眉を潜める。
「どういうことだ……女人国が一つ減るって」
「……それは」
「はっ、賞金首のお前との約束何て守るわけないだろ! そこで静かに捕まってな」

 れいたちが コロサレル

 その瞬間、ネオの瞳は異端を思わせるように金色に輝かせた。男たちは情けない悲鳴を上げたが、一人が海楼石を見つめ、大丈夫だ! 海楼石がある、と叫んだ。だが、その期待は裏切られた。
 海楼石の手錠は静かに水となり、落ちた。海楼石は言わば海の石。水を操るネオにとっては身体の一部のようなものだ。ひいっと、また悲鳴を上げた。

「交渉決裂、だな」
「ま、待ってくれッ! 俺たちは」

 そんな言葉も虚しく、水となり牢を抜けたネオの手に握られた鋭く尖った氷が、男たちの腹部に刺さっていた。重力に従い、落ちてゆく。
 男たちを見ることもなく、踵を返す。

 階段をかけ上がった。通りすがって行く海軍はみんな悲鳴、助けの声を上げる前に気絶させた。手に握られた氷、手は赤く染まっていく。
 船の表へと出れば、大砲を国へと撃つ海軍の船が遠くに見えた。何よりも先にレイたちが優先だと頭が判断したのだろう。後ろから海軍たちの声が聞こえていたが、ネオは海へと身を投げていた。



 国の海岸へと着いたネオは悲惨な状況にある国に涙も出ず、ただただ、生きていてくれと、足を進めた。爆発が起こり、初めて来たときの原型はもはや、ない。
 広場へと出ればどこよりも悲惨な状況となっていた。家は原型を留めておらず、あちこちに死体とも分からぬ物体があちこちに転がっている。死臭は鼻を曲げた。
 そんなこと関係なかった。
 レイたちの安否だけが心配で、不安だった。先ほどまでレイたちがいた広場へと出る。そこには身をうずめるレイたちの姿があった。ネオは近づき、手を取ろうとしたが、その足は止まった。
「レイ様、なぜ、なぜッ国はこのような仕打ちを受けなくてはならないのですかッ!」
 叫び声を上げる一人の女性。顔は泥と涙でぐちゃぐちゃだった。叫ばれたレイは笑った。
「大丈夫ですわ。生き残っている者さえいれば、国はまた新しい歴史を作っていけます」
 その言葉はネオの胸に堕ちる。
 母さんも同じようなことを言っていた。――生きていれば、新しい世界を創っていける、と。
 だか、そんなレイと話していた女性が頷き、笑おうとした瞬間。銃声が上がり、女性は沈んだ。レイは、その女性の名前であろう名前を叫んだ。レイの後ろには海軍が立っていた。
「まだ、生き残りがいたとはな」
 ネオは思わず飛び出し、その男を切り刻んでいた。レイは悲鳴を上げたが、駄目ッ! と叫び、立ち上がり銃声が上がった。振り返れば、レイは血に染まり、堕ちていく。きっと海軍はネオを狙ったはずだ。
 返り血が、ネオに着く。


 ――ああ、お前の周りは血ばかりね

 不意に、あの女の声が聞こえた。

 ――全て、お前が コロシタノヨ












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