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 沈黙が続く。そんな沈黙を破ったのはネオだった。振り返り、レイたちに笑いかける。その笑顔が歪んでいたことにネオが気付くことはなかった。
「あんたたちの女王は、レイなんだ」
 レイは顔を歪める。しゃがんでいたが、立ち上がり、ネオの目の前に歩いてきた。
「この国は一番強い者が女王になる。貴女は何があっても女王なのよ。賞金首だとしても」
 そう、レイは呟いた。だが、ネオは叫んだ。それは、悲痛な叫びだった。

「俺は人を殺したくねえんだよ!」

 レイは眉を潜めた。ネオは海軍である男の方へと振り返った。まわりの女性はみんな、お姉様と小さく呟いている。だが、ネオは振り返らない。
「私は海軍に身を引き渡します。その代わり、海軍に連れていかれたこの国の人たちを返してください」
 後ろで批判の声が上がったが、ネオが聞くことはなかった。そんな言葉に海軍の男は笑った。企むような笑顔にネオは睨み付ける。
 だが、男は頷いた。
「良いだろう。罪のある者のみが裁かれる。そうだろう? では、着いてきてもらおう」
 そう言って踵を返した男の後にネオは続く。後ろからレイの批判の声が聞こえたが、止める者はいなかった。
 着いていくネオ。男の向かった先は海軍専用の船だ。そこで、船渡しの板の上で、部下らしき者が男に手錠を渡す。それを受け取った男はネオの方を振り返った。そしてその手錠を前へ差し出す。
「海楼石の手錠だ。かけろ」
 そう言われ、男を見る。そして睨み付けた。
「まずは国の人たちの解放だ」
「……良いだろう」
 そう頷いた男は振り返り、部下に指示を出した。奥へと走っていった部下は何人かの紫目、黒髪の女性たちを引き連れ、出てきた。手には手錠がかけられている。部下は一人一人の手錠を外した。
「これで良いかな?」
 そんな男の声に相変わらず睨んでいるネオだが、静かに前へ手を差し出す。がちゃっと、生々しい音が響く。ネオは何も言わない。

「お前は海軍本部へ身を引き渡す」

 その言葉に静かに耳を向け、目を伏せるしかなかった。
 そう言えば、まだエースに飯、食わせてやってないなあ。今後、助けるはずだったのに。呆気ない。エース心配するかなあ。あいつなら大丈夫か。
 せめて――ありがとうって言いたかった。

 手の枷を冷たく感じながら、男の後に続く。この先に待つのは暗い闇だろうか。拷問なら受けてたとう。天使の実の試練以上に苦しいもんなどあるとは思わない。
 口元は静かに緩む。なんだ。やっぱり、生きたいんじゃないか。あっちの世界では死にたかったはずなのに。生きていてはいけない存在だったはずなのに。
 奥へと歩みを進め、ついた先は奥深くの暗い牢屋だった。何もない質素な牢屋。
 ネオとエースの考えは浅はかだったのだ。ネオが男装して隠れれば情報があまりに少ないため、全く関係ない女性が狙われる。それなら最初から堂々と闘えば良かった。バカだ……――

 揺れ始める。これから船は海軍本部へと向かう。









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