黒ひげはあっちこっちで色々な国を襲っているのは間違いない。何故、そんなことをしてるのかは、全く分からない。だが、おれは必ず黒ひげを殺さなくちゃあいけない。
「じゃあもう一つ聞くけど、麦わら帽子をかぶった海賊がここへ来たか?」
「いや、知らねェな」
エースは懐から手配書を出す。麦わらのルフィ。エースの弟であり、海賊。
ここら辺の海へ来たという噂があり、一目会おうと、探しているのだ。その手配書を男に渡す。
「……もしコイツがここへ来たら、おれは10日間だけアラバスタで、お前を待つと伝えてくれ」
そうエースは指を指す。そういえばとふと、思い出した様に呟いた。
「ネオと名乗る男がここに来たか?」
「いや」
「まあ、そいつが来たら、船に戻ってると伝えてくれ」
溜め息混じりに言うエースに男たちは、ああと返す。
「じゃ……頼んだよ」
エースはそう頼むと踵を返し、歩いて行ってしまう。だが、男たちがふと、大切なことを忘れてたことに気付き、エースを止めた。
「おい、ちょっと待ってくれ。あんた名前は?!」
男の言葉に忘れてたとでも言うように、エースは振り返る。
「おおっ! そうだ! そりゃそうだ、うっかりしてた」
笑いながら頭をかく。
「おれは"エース"。そのルフィってのが来たら、そう言ってくれりゃわかる」
それだけ伝え、立ち去ろうとしたが。
「オイ、そいつを捕まえてくれ、食い逃げ野郎だ!」
「え?!」
「やべっ! じゃ頼んだぜ!」
後ろから叫ぶ声に、スピードを上げながら今日、船を降りた場所へと向かう。ここに黒ひげがいないなら用はない。次の国で新しい情報を手に入れるまでだ。
だが、大きな忘れ物をしてることを思い出し、進路を変更する。大の男を一人、忘れていたのだ。
「あれ……ここがロベールって聞いたんだけどな」
ところ変わってネオ。道に迷いながら着いたロベールで、エースを探し、きょろきょろするがやはり寒さのせいか、人自体が少ない。
溜め息を吐き、とりあえず歩くことにする。歩いて行けば、二人の男が立っている。
すみません、と声をかければ、二人は振り返った。
「あの、ここに怪しい旅人が来なかった?」
そう尋ねれば、二人は顔を見合わせた。
「もしかして、エースさんって人か?」
「そうそう」
二人はまた、顔を見合わせた。そして、怪訝そうな顔をする。
「君はその人の知り合い?」
「……」
ネオはこのとき察した。知り合いだと答えたらマズイということを。
そして、首を横に思いっきり振った。
「いや! 知り合いじゃない、そいつをおれは追いかける賞金稼ぎなのさ!」
「賞金稼ぎ?」
「そうそう!」
そんなネオの苦し紛れの嘘に相変わらず男たちは不審そうな顔をしている。ネオは密かにエースを恨んだ。
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