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 泡のような物に包まれてはいるが、透明で、透けて海の様子が見える。
「すげえ……」
「じゃあ、潜水でもすっか!」
 ネオが笑いながら言えば、その泡はどんどん下へと降りて行く。小さな魚や大きな魚は水面上の太陽の光が入り込み、キラキラと光輝く。
 珊瑚礁も色とりどりの海の森を作った。

 全てが初体験、そして初めて見る光景。一生カナヅチでも良いと思っていた。だが、海にはこんな神秘的な一面があるなんて初めて知った。

 ネオがいるのも忘れて見入っていれば、後ろから笑い声が聞こえてくる。振り返れば、ネオがクスクスと笑っていた。
「しょうがねえだろ、海をこんな風に見たのは初めて何だから」
 今までは海の上から眺めることしか出来なかった。だけど、今は違う。カナヅチ何て関係なく、海を中から眺める事ができる。こんな贅沢なことはあるだろうか。
「そんなことで笑ってるんじゃねえよ」
 クスクスと笑うネオが言った。

「やっぱり、人は誰でも海の子何だなあって」

 ふんわりと笑ったネオは、いつもと違うようにエースの瞳に映った。太陽の光に輝く髪。瞳。懐かしい感じがした。そして、美しく映った。
 はっと、思い出した様な顔をしたネオはいつも通りに戻る。
「ネタバレ発言」
「は?」
「いや、こっちの話」
 にっこりと笑ったネオは近づいてきた魚たちと戯れた。エースは空が見えない、海中から、水面を眺めた。

「今の言葉、受け売り……って気付いたか?」
 ボソッと呟いたネオに顔を向ける。今の言葉。海の子って、ところだろうか。
「もしかして、それ」
「気付いたならよし。それ以上は言わなくてよろし」
 けらけら笑ったネオ。

「海って綺麗だろ、エース」
 だんだん浮上する二人。エースは遠くを見据えるネオを見つめる。
「どんな奴でも、純粋な心ってあると思うんだ」
 水面へ上がる。エースはだんだん浅瀬へ流される。足が着き、波打ち際に尻餅が着くように座った。ネオは水面上に立っている。
 まるで、そこに足場があるかのように。

「この、海のように」


 光がネオに影をもたらす。キラキラと光る海にポツンと立つ、ネオの影は、太陽には笑っているように見えた。
 エースには泣いているように見えた。
「海は気まぐれだからな、俺みたいに、だからこの能力は俺にぴったりだ」
 背を向けたネオは何も語らない。






あきゅろす。
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