トリップしている間に結構時間が経ったのか、おいっ! っと、男にナイフをまた首に当てがられた。
全く……
「人質が強かったら意味ないってことも覚えておくんだな」
「へ?」
間抜けな返事が食堂内でハモり、それと同時にがんっという良い音が響いた。
簡単だ。ネオが男の持っていたナイフを蹴り飛ばしたのだ。
その後、肘鉄を鳩尾に入れ、蹴り飛ばした。勢い良く飛んだ男は、壁に思いっきりぶつかり、そして、倒れた。
辺りは、今までとは違う意味でシーンとする。空に飛んだナイフを綺麗にキャッチし、そのナイフについた自分の血を舐めとる。
口角はつり上がった。
「ストレスの発散くらいにはなってくれるよなあ?」
辺りに叫び声が響く。
ナイフを投げつけ、壁に刺す。それが合図。走り出したネオはエースが倒し損ねたやつ、また、今の間に復活したやつを次々と倒していく。
エースや周りの奴等は呆気にとられている。
「こいつも賞金首なのか?!」
「いや、海賊っぐふっ!」
「海賊じゃねえよ。てめえらが邪魔したから制裁してんだよ、一度死ね!」
「ぎゃああああ!」
食堂はたちまち断末魔が鳴り響く、戦場へと変わり果てた。と、言うよりも一方的なリンチとも言えるが。
あっという間に倒して除けたネオは山積みにされた奴等に片足を乗せ、ピース。
「……海賊よりも質わりいよ」
「失礼だなあ、これでも手加減したぜ?」
ニコッと笑ったネオにエースは大きな溜め息をついた。周りのギャラリーは恐ろしさのあまり、隠れている。
エースは思った。能力がなくても充分戦えるのでは、と。そして、こいつは本当に女なのかと。
時々急所を思いっきり蹴り飛ばされている相手を見て、痛すぎて鳥肌が立った。女だから分からないんだろうな。この痛さは。
乗っけていた足を下ろし、よし、と笑うネオは俺の隣まで歩いてくる。
腹は満たした。これ以上、ここにいる理由はない。エースは、いつも通り、食い逃げするためにはどうすれば良いかを試行錯誤する。
この状態なら逃げられなくもないが、ネオもいるのだ。
扉に向かって歩けば、案の定、恐る恐る店員がお金! と言った。エースはネオの腕を掴み、逃げようとしたが、ネオが店員の方へ振り返り、にっこりと有無を言わせない笑顔を作った。
「そこら辺で倒れている方たちのツケでお願いします」
エースがそいつらに同情したのは言うまでもない。
エースは誓った。絶対にネオは敵に回さないと。
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