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「ごめん、エース」
 手をビシッとカッコつけて、言えばエースは呆れるように溜め息を吐いた。
「ったく……何やってんだよ」
 溜め息混じりの言葉にごめんと、舌を出して出来る限り、人質らしくする。だってこんな状況始めてだし。人質を取る前に倒しちゃうし?

「こいつが殺されたくなかったら大人しく捕まれ!」
「きゃー助けてーエースー」

 あからさまな棒読みに、辺りはシーンとなる。エースに関しては頭を抱えた。何で頭を抱えるかなあ。うぜえとか、悪態つくよかましだろ。
 いきなりナイフを突きつけられる。先ほどよりも遥かに近いって言うか、臭い。

「てめえ……少しは人質らしくしたらどうだ!」
「何をおっしゃいます。これでも精一杯人質を満喫してます」
「満喫するな!」

 食堂全員の突っ込みに、えー、とブーイングするのはネオだ。
 だって始めてなんだもん。そう、言えば知るか! と叫ばれた。

「殺されるかもしれねえってのに、随分余裕じゃねえか……ああ?!」
 人質にしている男は、あまりの余裕の態度に、堪忍袋の緒が切れたのか、ぷつっと、首にナイフを当てた。
 紅い血が首もとを流れる。エースは焦っているのか、どうなのかは分からないが、眉を潜ませ、動かない。
 血の着いたナイフを離し、床にポタポタと赤い染みを作った。

「お前のことはいつでも殺せるってことを覚えとけ!」
「でも、殺す気ないだろ?」

 にかっと笑ったネオに辺りはまた、シーンとする。

「人質を殺せば、エースとの交渉は出来ない。知ってるか? 人質ってのは戦闘の中で、最も邪魔なものだって」
「てめえ……何が言いてえ」

 ナイフを改めて突きつけられ、首に傷がつく。本当に止めて欲しいわ。

「だから、あんたの考えは浅いってこと。策士をメンバーに入れるべきですよ?」
「何っ!」
「人選ミスですって」

 そんな溜め息を混じりの言葉に周りの賞金稼ぎは体をプルプルさせている。
 それより、臭いって何度思えば分かってくれるんだよ。ああ、言わなきゃ駄目か。
 それに俺はか弱い女の子何だけどなあ……
 戦闘の真ん中にいるような子じゃないですよ……

 ってか、こんなに接触してんだから女って気づけよ……
 体つきは普通に女だよ? 手術してねえよ? 勘違いすんなよ?
 ああ……そう考えるとイライラしてきた。今日は厄日だ。絶対そうだ。








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