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 ……何度食べても死ぬことはない。
 そう、言われても複数の実をこの時点で食べる気は起こさなかった。もし、あっちの世界でまた、新たな実を見つけたのなら迷わず食べるだろう。
 たくさん用意されている中から全て、というのは気が引けた。そんなの、最強過ぎてつまらない。少しはデンジャラスにいきたい。

 一つの実が、ふと、目に入った。
 その実には鎖がかけられている。まるで食べてはいけないよう。
 疑問に気付いたのか、少年はその実を手に取った。
「この実は"ミズミズの実"。別名"死の実"と呼ばれた実だ」
 水色で綺麗な色をしたまるで、イチゴのような形の果物。
「悪魔の実の能力者は水に嫌われる。嫌われる能力を手に入れれば、自分で自分に溺れ、死ぬ。だから、我々が封印した、あまりに危険だからな」
 目を細め、呟いた少年は何かを思い出しているように見える。
「この実を食べた奴がいる。死んだがな、だが、お前は水には嫌われない」
 手にとり、眺める。綺麗な青い実は海を思わせる。青い食べ物何て不味そうに見えるが、俺から見たら、これは本当に美味しそう。
 俺は、悪魔の実の弱点を相殺できる。だから、死ぬことはない。なら……

「じゃあ、この実にするよ」

 笑って言えば、少年は表情には出なかったが、ふんわりと微笑んだ気がした。

「良いのか」
「ああ、こいつ、まるで俺に食べろって言ってるみたいだ。だって、俺にしか食えねえんだろ?」

 笑いながら言えば、少年は安堵したように見える。

「分かった」

 そう言った瞬間、鎖は解かれ、バツも消えた。手に置かれた実を口に含む。感覚的には何も変化はない。
 だが、自分が水になることを意識すれば腕が水、液体となった。
「すっげえ!」
「司」
 呼ばれた方を振り返れば、少年はにっこりと微笑んでいた。

「そろそろ時間だ。忘れるな、この世に偶然はない。必然ばかりだ。お前の元の世界での悲劇が、生まれながらの必然だったように、お前が異世界へ行くのもまた必然」
 神妙な顔つき。
 少年はそんな言葉を言いながら、一歩また一歩と近づく。
 必然。なら、あっちでの出来事も、また必然。

「司、だが、例外もある。お前の今後だ……」

 少年は目の前へ。

「異世界へ行けば、運命はない。全て偶然。だから、僕は君を助けられない、全て自分で切り開くんだ」

 手が目の前で開かれる。

「生きろ、そして、笑え」

 闇へと足が取られる。
 足元から広がってきた闇は俺をどんどん飲み込む。少年の姿も薄れて行く。だが、まだ彼に聞いていないことがあった。
 闇から逃れようと手を伸ばす。

「まだ、あんたの名前を聞いてなかったな! 教えろよ!」

 少年はびっくりとした面持ちだったが、まるで嬉しそうに微笑んだ。

「チェイン……鎖だ」
「そっか」

 そして、消えた。











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