斎平
今までどれだけ斬ってきても満足できなかったのは、きっとこの瞬間を十分に味わうためだったのだと思った。
感触など無い。
斬った、というより通った、の方がしっくりくる。
袈裟懸けにばっさり。
柄にもなく早鐘を打つ心臓。
気持ちいい。
気持ちいい。
「さい、と…う」
そんな顔しないでくれ。
誰だったか、俺は記憶を辿る。
昔の話だ。
誰かが誰かをこうして袈裟懸けに切り下げた後、こうやって手首を返して首を。
がつっ。
首を落とした覚えがある。
…しかし、
やってしまったな。
こいつの体は出来るだけ原型を留めていたかったのだが。
「すまんな、藤堂」
誰かってのは貫一郎。
←→
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!