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 会場に選ばれたのは本宮にある議員本会議場だ。面積、収容人数、設備共に国会議事堂随一である。
 この日のためにキリアン――世界王政府がサンテ政府に要求したのは次の通り。

 事件の二日後に上がって来た視覚情報を収めたハードディスクは当日まで神が管理すること。
 事前に行った意識調査に基づき、業務に支障の出ない範囲で職員の自由な列席傍聴を許可すること。列席する職員は配布した許可証を持参し、これを提示できない者は入場を許可しない。
 本会議場の入場者の許可証チェックに防衛庁機動隊を配置すること。上映中、機動隊はそのまま本会議場外に待機し不正入場者を取り締まること。
 会議の証拠を残すためビデオカメラを数台設置し録画すること。ただしこれを外部には一切漏らさないこと。

 キリアン自身、視覚映像は見ていない。月陰城の調査室から上がって来た内容報告書を斜め読みした程度である。
 それだけでもあの煩い元老院が卒倒するには十分なものであることが知れた。
 今のキリアンはサンテ政府に対し儀堂も含めたジオの全権を委譲されているし現政権に限って世界王の個人情報の開示も許可されている。何もおかしなことではない。今ここにゴルデワ人は彼一人しかおらず、また四大王全員が既に一部サンテ国民に顔を晒している。今更隠しても意味はないという判断と共に、東殿が目の当たりにしたジーク・ルイの反北殿の反応を見てこいという訳だ。
 キリアンは内閣官房府の人間と共に最終確認をして回り、会議場の正面端にまでずらした議長席に戻って資料を確認する。本来議長席のある場所は空けられ、その背後の壁にスクリーン投映することになっている。
「失礼、ミスター・ワイアット」
 この呼ばれ方は何日経っても慣れない。キリアンはむず痒いのをひた隠し愛想笑いで内閣官房長官に応じた。
 短い打ち合わせを終え、資料確認作業に戻る。一人ぽつんと資料を読みふけるキリアンには今朝からサンテ人の視線がグサグサと刺さっているが、彼の日常を考えればまだまだ可愛いものである。
 世界王に雷を落とす側近、顔を合わせれば罵り合いをする世界王と女軍人、いつもにこにこ腹黒筆頭秘書官。こんな中で終わらない仕事に励んでいるのだ、サンテ人の冷たい視線くらい訳もない。
 防衛庁機動隊が配置に付くと直にぱらぱらと人がやって来る。
 キリアンが首を傾げて腕時計を確認するとまだ一時間以上早い。
「…………仕事に支障のない範囲でって言ったのにな」
 小型端末を立ち上げ表示資料の最終チェックを済ませると入場十分前になっていた。
 議長席――今は壁面スクリーン――に向かって放射階段状になっている各席は、この時点で既に二割ほどの入になっている。上映開始には四十分も早い。
「…………」
 この二割の人たちは仕事が無いのだろうか。月陰城では考えられない光景だった。
 時間は瞬く間に過ぎ、あっという間に神の二席を残して満席になった。
 二分遅れてやって来た神からハードディスクを受け取り端末と接続したキリアンは、片手を上げて照明を落とさせるとマイクのスイッチを入れた。
 ざわめいていた場内は照明が落ちると程なく静まり返る。それを確認し、キリアンは挨拶と説明を始めた。
「この度はお忙しい中お集まり頂き誠に有難うございます。私は世界王西殿第八秘書官のワイアットと申します。これからご覧頂きますのは、去る十一日、シーズヒル丘陵及びシクレイズ小学校五年七組で起こった事件の一部始終です」
 壁面スクリーンに投影が開始される。けれど映し出されたのは男性三人女性一人の顔写真だった。
 キリアンは事件の概要と上映する映像の記録方法を説明した。
「一部グロテスクな描写もありますので苦手な方はお手元のヘッドホンとアイマスクをご着用下さい」





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あきゅろす。
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