自由な鳥
父が死んだ。
後を追うように母も死んだ。
まだ暑さが少し残る蒸し暑い夏の終わりのことだった。
一人残された俺は、実感も湧かぬまま葬式を終え、遠縁の家族に引き取られた。
「透君。今日は家族水入らずで旅行に行くの。だから三日ほど留守番お願いね」
「分かったよ。じゃあ、いってらっしゃい」
今日からこの家族は旅行に出るらしい。
言葉から読み取るに俺は邪魔な水らしい。
まぁ、今更である。元からこの家族が両親の遺産目当てってことくらい分かってた。
ここは鳥かごのようで俺はこの家から出れない。楽しいこともない。ただ生きてる。
出ても金もないし生きれるかも曖昧だ。
―――でも。
ここの母から俺は三万円貰った。
これだけあるなら確かに三日は生きていける。
でも、俺はこの三万を三日の食費を使う気はない。
もう5年も経った。
そろそろいいだろう。
自由になりたい。
――今は亡き母は鳥が好きだった。
だから俺も鳥が好きだった。
将来の夢を問われて『鳥』と答えた思い出もある。
それを聞いて笑った亡き父は言った。
「透、鳥さんになるのは難しい。だけど、鳥さんのようにはなれる。鳥さんは自由だ。だから透も自由に生きろ」―――。
今思えば何ともおかしなことを俺は言っていた。
でも、両親は笑って受け止めて鳥に近づく方法を教えてくれた。
俺は人である。鳥ではない。
でも、俺は鳥になりたかった。
ならなってやろうじゃないか。
母が好きだった鳥に。
父が教えてくれた鳥に。
自由な鳥に。
―――俺は自由になりたいのです。
今の俺は鳥かごに入った鳥である。
逃げないと過信している金の亡者よ。
鳥は逃げる。
機会を見ているのだ。
開いた鳥かごから俺は逃げてやろうではないか。
死んでもいい。
ただ俺は
―――自由になりたいのです。
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