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パワーストーン物語
F
俺は心の中だけで確かにそうだなと思いながら彼女の美しい顔を思い浮かべてみた。
彼女が俺を心配し、駆け寄ってくれていたのだとすると、あの天使のような優しい声はあのクラス1の美人、喜多川茉莉花から発せられたものに間違いないだろう…。
それにしても彼女がどうしてこんなに臭い俺のような男のピンチに駆け付けて来てくれたのか、その理由がさっぱり分からなかった。
でも俺はこの空腹のお陰で今日は人生始まって以来の幸せを胸一杯に、感じてしまってる!!
さっぱりした身体からは微かにリンスインシャンプーのいい匂いもする。実はこれも山中が買って来てくれた物だった。
俺は今日初めてこんなに尽くしてくれた山中を真の友達だと思えた。
山中はいつも弁当を少しくれるがこんなに沢山気持ちを俺に向けてくれた事は1度もなかったし、何処か仕方なく俺の面倒を見てて俺の事を見下してるのかと思ってたがそれは俺の貧乏ゆえのひがみ心が生み出した被害妄想だったと今日になって凄く思った。
今日の山中は俺に自分の本心だけを話してくれている。それが物凄く嬉しかった。
後に知ったが喜多川さんの制服が汚れるのを心配し、保健室に柳原先生を呼びに行ってくれたのも山中の優しい気配りだったようで、実は前々からこんな俺をクラスの中で、1番心配してくれてた事も後からじわじわと分かって来た。
俺の幼い頃からずーっとひねくれてた心はいつしか山中や柳原先生、そして喜多川さんの愛でだんだんと癒されていったのだった。
俺の長かった冬は終わり、今回の件を発端に教室内に日常的に漂っていた不穏な空気は少しづつ変わり始めていた。
まず柳原先生が学校側に掛け合ってくれたお陰で俺はバイトを2つもやっていい事になった。
1つは前にもやっていた毎日の新聞配達のアルバイトで、もう1つが柳原先生の親戚のおばさんがやってる、可愛い名前の喫茶「ヒヨコ」でのアルバイトだった。
そこは夕方の6時までで閉まる朝のモーニングセットと3時のおやつのケーキセットだけが売りの喫茶店だったから夜遅くまで働かなくてよく、学業にはあまり差し障りがないだろうとの学校側の判断で特別に許可が下った俺にとっては最高にいい待遇のアルバイト先だった!
余ったサンドイッチや作る時に切って捨ててしまうパンの耳の他に、美味いケーキを貰って帰れる日もある素晴らしいバイト先だったのだー!!


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