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パワーストーン物語
D
「せっ、先生……!?保健室の柳原先生…!!?」

母さんじゃなかったんだ…!
年配の天使でもなかったんだ…!
俺、あのまま死んだんじゃなかったんだぁ!!
でもそんな事を言ってる場合じゃなかった!
何か凄く恥ずかしい事を夢の中で口走った気がするぞ!
おまけになんなんだぁー!!
俺、学生服着てないじゃん!
こんなボロボロの穴だらけのTシャツ姿いっちょうでこんな真っ白で清潔なシーツの上で女子に臭いと言われ続けた身体のまま寝てたなんて…!!

「ひょえ〜!!」

俺はすっ頓狂な声を上げて汚な過ぎる身体を隠そうとしたがもはや手遅れだった…。
長い年月を経けて薄汚れてもう白とは呼べない程変色しきったTシャツ。
それをたった1枚身に纏うと穴から覗いた痩せコケた身体はきっとこの巨漢の先生の目には憐れに映った事だろう…。
するとそれを一早く察知したのか、柳原先生が俺の肩にそっとまだ幾分マシな黒い制服を優しくかけてくれた。

その時だった!
勢い良く扉を開けて山中が飛び込んで来たのは…!!

「先生買って来たぜ!」

山中の手には山のようなコンビニ袋と不透明なビニール袋がいくつもぶら下がっていた!
その中から何やらうまそうな匂いがする!
山中はその中から様々な種類の弁当や俺の死ぬ程好きなシャケおにぎりを出して来て蓋やテープやビニールを全部はずすと俺に向かって「早く食え!」と差し出した!
更に「全部食え!」と山中に言われた俺はあいつに促されなくても勿論遠慮なく全部頂く気でいた。
おにぎりのシャケが胃に到達するのが待ちきれない。

「うめ〜!!!」

俺は珍しく大きな声で山中や俺の豪快な食いっぷりに驚いている柳原先生に向かって言う。
するとこんな男らしい言葉を吐く俺を1度も見た事がなかった山中が少し驚いた表情を見せたがすぐに顔をほころばせるとニコリと笑う。
それを見ていた先生も同じようにニッコリ笑う。
その2人の笑顔を見ているうちに俺は超恥ずかしくなって軽く笑ってごまかすのだった。
気が付けば飯のあまりの美味さに涙が止まらなくなってる自分にハッとしたけど、それは殆ど飯を食べ終わった後の事だった。


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あきゅろす。
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