パワーストーン物語 C もう指1本さえ動かせない俺は心の中でもう1度さっきの天使が囁くような優しい声を聞きたいと思っていた。 だけどその時ふと我に返った! さっきの声ってまさか…俺がこのまま死ぬから天使の迎えが来たって事はないか!? 天使は俺を天へと連れて行くのか…? それはつまり…こんな俺でも天国に行けるって事か!? でも俺がこのまま死んだら親父はいったいどうなるのかなぁ…!? 折角高校まで行かせてくれた親父にうまいもんの1つも食わせてやれないまま俺は死んで行くのかなぁ…。 なんて親不孝な俺…。 すまない親父…。 本当にすまない……。 それからしばらくは真っ白で何もない時間だけが流れた。 何の音もせず誰の声も聞こえず何の色も見えなかった。 俺はついに死んでしまったんだなぁ…と思ったが、ふいに今度はすぐ耳元で、さっきより幾分年配を思わせる天使の囁く声がして来た! 「大丈夫?こんなになるまで1人で頑張って…」 俺はその天使に死んだお袋を重ね合わせていた。 「母さん…僕お腹が空いたよぉ〜!早く何か食べさせてよぉ〜!」 俺はお袋が生きていた頃の素直な言葉に戻って精一杯甘えてみる。 「父さんにも何か食べさせてあげてよ〜!きっと今頃お腹ペコペコの筈だから…」 「くすっ。はいはい分かりましたよ!何か食べたかったら早く起きなさい!」 「でも僕……凄く眠くて起きられないよぉ…ムニャムニャ…」 「まぁ!村田君ったら」 「む、村田君……?母さん……?」 「母さんはいいから早く起きなさい、村田、村田将也君っー!!」 「はっ、はいっーー!!」 俺はフルネームで名前を呼ばれた事に酷く驚いてはい!と大きな声で返事をすると、慌てたように重過ぎる身体を起こして起き上がった! すると、大きく返事をして急に起き上がって来た俺に驚いたのか、目の前にいた白い巨漢の女性は少し身体を引いて、びっくり顔で俺のやつれた顔をチラ見している!! [前へ][次へ] [戻る] |