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パワーストーン物語
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「クリスマスなんてなけりゃあいいのにぃー!!サンタなんて大嫌いだー!!!」

これは去年までの俺の心の中の密かな叫び…。
俺はついこの間まで世の中の全てを羨ましく思って来た。
同じクラスの田中や丸山は、新作ゲームの話ばっかするし、落合はサッカーの練習に明け暮れていて汗臭い筈なのにルックスが良いせいでいつも女子に囲まれててやたらと楽しそうだ。
ところが同じ女子達の俺への扱いは余りにもヒドいもんだった。
穴の空いたまんまの俺の学生服を指差して笑い、まるで汚い者でも見るような視線を毎日のように送って来る。
そんな理由からか俺はこんな自分が可哀相に思えてならなかった…。
特に街がやたらピカピカしてラブラブカップル達が、うきうきするこの季節はその辛さが骨身に染みてしまう…。
そう…。それも無理はない。
俺がとても貧しく生まれついたのが悪いんだ!!
欲しい物を自由に買えない極貧生活が幼い頃からず〜っと続いてたのが悪いんだ!!
サンタはここにこんな可哀相な子供がいる事すら知らないかのように、俺の家には1度も来なかった。
もしかしてサンタ好みの可愛らしい子供ではなかった俺が悪かったのかも知れないが…。
俺の心が幼い頃から皮肉に満ちているのをサンタも感じて来てはくれなかったのかも知れないが…。
心の中はいつもこんな風にかなりひねくれていた。
そんな俺は自分の事を人前では「僕」と呼ぶ。
クラスでは凄く気弱で情けない男で通ってたりもする。
クラスの女子には自分の方から1度も声をかけた事がなく、男子に対しても寒さに弱った蚊が鳴いたような小さな声でしか話せないでいる情けない男だったりもする…。
でも心の中ではいつも俺は大きく声を張り上げていた。

「俺は金持ちになりたいー!!女にもモテてみたいー!!
うまいもんをたらふく食べてテレビを片っ端から観て新作ゲームをしまくってもっと楽に暮らしたいー!!」

いつもそう叫んでる。

でもそれを全部言葉にしたら親父はきっと悲しむだろうなぁ…なんて思うとそれだけは口が裂けても言えなかった。
昔はまだ良かった。お袋が生きてた頃も貧乏には違いなかったが今程苦しくはなかった。
本人に聞いた話だが親父は昔は全く働かない男だったらしい。
昼間っから酒を飲んで、お袋をよく泣かせたと時折悲しそうな目で話して聞かせてくれた。


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