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パワーストーン物語
F
その僅かな時間を見逃さなかったローズは更にクマの顔目掛けて小石を2、3個おみまいすると、そのスキに死んだふりをして倒れた人の所へと行き、その人物を素早く抱き上げました。
そしてそのまま一目散に森の外へと駆け出して行ったのでした。
あっという間に森の中を抜け出して安全な場所へと移動してから、抱えて来たその人物の顔をよくよく見て見ると、なんとびっくり!

「やけに軽い人だと思ったけど、ミレンツェ!アナタだったの!?」

「キッ、キミは……子供の頃から怪力だったあのロージー!!?」

「か、怪力ってどう言う事…!!」

なんと言う事でしょう…!
ローズはビリー以外にあともう1人いる村で1番人気の若者ミレンツェを自分でも全く気付かぬうちに助け出していたのでした!
ミレンツェはスレンダーで小柄な体格の色白な若者です。
彼はローズを含めた総ての村娘達の憧れの的でした。
ミレンツェは、小さな村唯一のちょっとした有名人でもありました。
彼の職業は画家だったのです。
まだ駆け出しですが、彼の描く絵には見る人の目を和ませる何か不思議な温かさがありました。風景画を好んで描いていた彼の作品である「森の声」は、ある大きな街の美術館に飾られる事になったばかりで、徐々に注目度も上がって来ていたのです。
これからまだまだ彼の知名度は上がって行く事でしょう。
そんな彼はこの小さな村が生んだちょっとした有名人だったのです!
ローズはビリーも好きでしたがこの優しくて、才能溢れる素敵な彼の事も昔っから大好きでした。
でも、ローズにとって彼は、高嶺の花のような存在でしたから、憧れはしましたが自分とどうこうとは全く考えていませんでした。
そんな凄い彼を、偶然だったとはいえ自分が助けた事が分かったその瞬間、ローズの色黒な顔色は赤黒く染まってあまりの恥ずかしさに逃げるように家に帰ってしまいました!

「私ったらあの有名なミレンツェをクマから助け出したんだわ!
でもあれじゃあ私の方がまるで男性みたいじゃない…!!
あぁ…ミレンツェはこんな私をどう思ったかしら…。
もしかしたら今、自分の両親にさっきの私の行動を全部話しているんじゃないかしら!?
それを聞いた両親はどう思ったかしら!?笑ったかしら…」



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