[携帯モード] [URL送信]

パワーストーン物語
A
この母の顔と言うのがこれまたローズに瓜二つ。
村の人達からは、日常的にからかわれる程、2人は誰がどこからどう見ても親子に間違いない程あまりにもそっくりでした。
父は昔から村1番のハンサムと言われたくらいの人だったのに、普通、女の子と言えば父親に似るもの。
それなのにローズときたら…。
ローズはいつもその事を悔しく思いながら、「私…男に生まれれば良かったんだわ!」と心から思いきる事も出来ずに女としては何処か寂しそうに生きて来ましたが、今でも母を深く愛し、こんな事を密かに考えてしまっている狭い心の自分をも心から愛し、可愛がってくれている優しい父の手前、両親を悲しませるような言葉や悩みの内容を自分からはどうしても口にする事は出来なかったのです。
それゆえにその苦しみが生涯癒える事はなく「自分はママに似てこんなにブスに生まれて来てしまったんだから!」
そう叫んで両親に当たる事も出来ない辛さがありました。
いっそそう叫んでしまえれば少しは楽になれるのでしょうが、それをしないのがローズの親譲りの優しい部分でもありました。
それにローズはこんな自分の悩みを誰も知る訳はないと思い込んでいましたが、実は母には彼女の心の中の密かな悩みなんてとっくに全部お見通しで彼女が最近本当は泣きたい気持ちで過ごして来た事も全部分かっていました。
ローズがどれだけ作り笑いを浮かべようがこの母に娘の不安を見抜けない筈はないのです!
何故なら母も以前、ローズと同じ年の頃に同じような苦い経験をいっぱいして来たのですから…。
色黒でそばかすだらけの肌…。
パサパサで癖のある髪質には身を飾る装飾の類いはさっぱり似合わなかったのです…。
ところがそんな母が今日突然自分に意外な物をくれたのでした。
それはローズの家の庭に咲くあの薔薇の花と同じ色をした丸形の石のついた指輪でした。
母は詳しくは何も語らずにその指輪だけをそっとローズの人差し指にはめてくれました。
もう随分昔に母の薬指のサイズで作られたその指輪は今のローズの人差し指にぴったりでした。

「ママ、これは…?」

「この指輪はねっ、今のロージーの悩み事に1番利く指輪なの!
でも、ほらっ、今じゃすっかり太ってしまったママの指にはもうこの指輪は入らないからこれはこのままロージーにあげる事にするわ!
さぁ、これを着けてアナタも昔の私みたいに大きな幸せを掴んでちょうだい♪」


[前へ][次へ]
[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!