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パワーストーン物語
C
「やばい!発作か!?」
俺が心でそう思った瞬間オヤジは顔中涙でぐしょぐしょになった空の頬を拭い、「仕方ない…。黒豆はうちで飼う事にしてやるよ」と空の身体を抱き上げた。
「黒豆…」
そのあまりに和風なセンスや知性のかけらも感じられない名前をどうしてもオヤジはこの猫に名付けたがっている(ちなみにオヤジの好物は豆類だ)すると空が「そんな名前は嫌だ!」と叫んだ。
(それはもっともな意見だろう)
しかしオヤジは全く耳を貸さなかった。
「おめぇ、黒豆を飼いたくねぇのか?ジュリアンなんて外国かぶれのしけた名前にしてみろ!俺が保健所に電話してすぐに連れてって貰うからな!いいな!?」
そこまで言われては誰も反論出来ず、かくして黒豆と名付けられたこの子猫はこうして我が家の一員に迎えられたのだった。
黒豆が我が家に来てからと言うもの、空は驚く程元気になって行った。
そしていつもより元気になったのは空だけではなかった。
黒豆は本当に不思議な猫だった。
近所にいるどの野良猫にも似ていないし近所の猫達は黒豆の姿を一目見るなり逃げ出した。
黒豆はだんだん成長するにつれ、首がちょっと長くなり、犬と間違われる事もしばしばあった。
いつだったか歴史の本で見たエジプトの壁画の猫が、まるでそのまま飛び出したかのようだった。
それに風呂が大好きで特にオヤジと一緒入りたがった。
食卓テーブルにはイスが5脚置かれ、オヤジと母ちゃんと空と俺と黒豆で普通に座っている。
まるで弟が1人増えたような気分で家族にすっかり溶け込んでいて、凄い事にオヤジの晩酌の相手までさせられている
「何が猫はでぇっ嫌いだぁ!?すっかり家族の一員じゃねぇか黒豆の奴…」
そうなって行ったのも黒豆が世間の猫とはまるで違っていたからに違いなかった。
俺ももうあいつがいない毎日なんて考えられない程あいつをだんだん好きになっていった。
やがて黒豆が来て数年が経過したある日の事、空が大好きな鉱物図鑑を眺めながらこんな事を言い始めた。
「僕…猫の形のこんな青い石がほしいなぁ…」
空は昔っからブルーがとても好きだった。
母親におねだりして部屋は青い空と真っ白な雲の柄のカーテンにして貰う程に自分の名前の空の青にもこだわりをもっていた。
俺はそんな弟の願いを叶えたくて春休みを利用し、昔住んでいた所のほど近くにあるパワーストーンショップへと久しぶりに足を運んでみた。


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