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パワーストーン物語
B
「あ、あれはまさしくジェイソンだ!!?」
今日は13日の金曜日…ならぬ木曜日だった事をカレンダーで再確認してほっとしていた俺はオヤジのギラギラした瞳を見てやっぱりちょっと足が震えた。
「やっぱりジェイソン入ってるってオヤジの奴…。どうすんだよぉ…まさかあれで床に穴を空けるってのかよ!? 怖ぇ…怖ぇよぉ…オヤジぃ!!?業者に頼まねぇなんてあんなやり方でほんとにいいのかよぉ…」
花粉症対策で鼻まで覆った白いマスクにギラギラした瞳。
そして俺達家族全員の見守る中、電機ノコは物凄い爆音を上げ、俺達のまだツヤツヤピンピカ新築キッチンのフローリングを切り裂き、木クズを四方八方飛び散らせると、あっと言う間に床に大きな穴を空けた。
あれ程怒っておいていくら何でも穴が大き過ぎる気もしたが、どんなものがいるのか判らないのだからそこは気にしないでおいた。
(やっぱり俺は小心者だ…)
やがて電器ノコを床に置いたオヤジはおそるおそる蓋みたいな形になってしまった穴型の木を横にずらした。
すると中から「ぶぎゅー!!!ぶにゃあー!!」と聞いた事のないうなり声が…!? お、俺はあんなにでかい生き物が床下にいる事を全く想像していなかった。
両親は床下に目をやり、弟はイスから立ち上がり床下の黒い物体をじっくりと眺めた。
「か、かわいい〜♪」 だが、まだ俺は思わず閉じた目を開けないでいる。
するとオヤジが床下からその黒い物体を引き上げてこう言った。
「不思議だなぁ…まだ赤ちゃんじゃねぇのかぁ?おめぇどっから入った?どうやってうちの床下に来た?」
まだ赤ちゃんと聞いて俺はようやく安心し、キツく閉じた目をおそるおそる開くとじっくりとあいつを見た!
最初は犬かと思ったが、よくよく見てみると犬と言うよりは猫のルックスに近かった。
しかしちまたの猫よか随分大きく見えるが、しぐさが子猫のようだった。だから父は赤ちゃんと言ったのだ。
気がつけば、空はうっとりした目で真っ黒で風変わりな子猫のヒゲやしっぽを引っ張って遊んでいたが、あいつは全く嫌がる様子も見せず、どうやらかなり鈍い奴のようだった。
「ベンジャミン♪ジュリアン♪ 僕、可愛い名前がいいなぁ♪」
「だめだ、だめだ!毛が飛ぶしおめぇの身体にも悪いじゃねぇか!俺は猫はでぇっ嫌いだぁ!ましてやこいつは黒猫だ!不吉なんだぞ!いる筈がないとこから現れたんだぞ!
悪魔の遣いだったらどうすんだ!?えぇ?」
すると空がありったけの声を張り上げてわ〜んわ〜んと泣き始め、みるみるうちに白かった顔面が青ざめて唇は真っ青になりつつあった。


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あきゅろす。
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