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パワーストーン物語
A
そんな兄の大きな悲鳴に驚いた弟の空は2階から心配そうに
「お兄ちゃんどうしたの!?大丈夫?」と何度も声をかけてくるのだった。
そして買い物帰りの母も不思議そうに床をしばらく眺めて考え込んでいたけれどすぐに2階に行き、空の痩せた白い身体を抱いてキッチンまで連れて来るのだった。
「お母さん、お願いがあるの…僕、あの中に何がいるかどうしても知りたいんだ!」
空のめったにないすがるような目のお願いに母はすぐには答えようとせず「お父さんが帰ったらどうするかその時一緒に相談しようね」とだけ言っていつものように手早く食事の準備を調えた。
やがて父が帰宅して我が家はよけい大騒ぎになった。
「なんだぁこの音は!?どうやって我が家に忍び込んだ!?」
父は床に蹴りを入れたりあちこち叩いてまわったりもした。
激しい性格だけにキレたら怖い。
更に外に出ては生き物が入り込めそうな隙間を捜してはみたが、そんな所はみじんもなかった。
だからこその怪奇現象だった。
それに何を隠そうこの顔にはとても似合わないぞと言われてしまいそうだが俺は相当な怖がりで、実はその時すでに床下の生き物を見たい気持ちよりも見たくない気持ちの方が随分と勝っていたのだった。
ところが、見掛けはとても弱々しくて、かよわげに見える弟の空はそのまったく正反対で、すでにわくわく好奇心のかたまりとなって床下の化け物(勝手に決め付けてる俺…)を見たそうにしている…。
けれど父の思いは複雑だった。
折角買った新築の家をそう簡単に傷つけたくはない。
「お父さん、僕、床下に何がいるのかどうしても知りたいの…お願い床に穴をあけてよ!
早く出してあげないと中の生き物が可哀相だよ…!このままじゃ絶対死んじゃうよー!」
「うーーん…でも新築なんだぞ!いくら可愛いおめぇの頼みでもこればっかはなぁ…」
それから数日間空は夕飯をまったく食わずにオヤジに無言の抗議をした。絶対に中の生き物を助けたかったのだ!
それに実はオヤジ譲りの頑固な遺伝子は敏之よりも空の方に強烈に受け継がれていて簡単にあきらめるとは思えない気迫を見せつけている。
数日が経過し、ついにオヤジは根負けしたように、ホームセンターで購入して来たらしき電器ノコを手に帰宅した。


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あきゅろす。
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