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パワーストーン物語
D
「小さくていい。猫の形の青い石!」
そこには水晶が干支の形にカットされたものや亀などの動物類がキレイに並んで陳列されていたが猫だけは見当たらなかった。
「おじさん、猫の形した青い石あるかぁ?」
「やぁ、キミは昔よくうちに来て買ってくれてた子じゃないか!?久しぶりだね。最初顔を見なかったけど、どうしてたんだい?」
「田舎に引っ越したから…」
「へぇ〜!それじゃ今日はその田舎からわざわざ?」
「うん、そう」
「それは嬉しいねぇ!安くしてあげるから是非買って行ってよ!とっておきのいい石があるんだ」
そう言うと何やら奥の方から少し大きいサイズの重そうなラピスラズリの猫を見せてくれた。
上質で金粉がいっぱい浮き出たラピスラズリは見るからに幸運を呼びそうだった。
けれど子供の小遣いだけで、とても買える代物じゃなかった。
だんだん欲しくなる欲望を押さえつつ、じっとラピスラズリの猫を眺めているとおじさんは
「ごめん、ごめん、これはおじさんの物でいつもは誰にも見えない所にこっそり隠して飾ってたんだけどキレイだろう?
これのお陰でうちは商売繁盛してるんだけど、ちょっとだけキミに自慢したくてね、つい見せちゃったよ、うちの商売繁盛の秘密兵器」
「なんだぁ、おじさんのもんかぁ…。道理で高そうでキレイな筈だ」
「ごめん、ごめん今度こそキミにお勧めのを出すよ!」
そう笑いながら体長10センチくらいの先程と同じ形をしたラピスラズリの猫と5センチくらいの青い石の猫を2種類出してくれた。
「こっちはラピスラズリだけどこれは?」
「あぁ、これはアズライトって青い石が中に混じったものだよ。ラピスラズリよりは少し軽いし全部がアズライトで出来てる訳じゃないから安くてお勧めだよ!」
「おじさん俺これにする!」
敏之は見た瞬間にびびっと来た。
おじさんはゆっくりとその石についてのうんちくを語り始めた。
だが空に早く見せたくて堪らない敏之はいつもの事で長くなりそうなおじさんのうんちくをうっとおしく感じて、早く包んでくれよと何度も催促した。
青の他に緑をした部分が少し見えたがそれはマラカイトってのが混じってるからって事だけを記憶すると、超特急で自宅へと帰って行った。
空はかなり敏感な弟だったから気配で新しい石が我が家に来た事に早くも気付いていて「お兄ちゃん、早くぅ♪」と嬉しそうな声で俺を呼んだ。
「じゃじゃーん!」
見えた瞬間に石博士の空の瞳がキラッと輝いた。そばには黒豆もいて空と同じように猫の形の石を見つめた。
「兄上っ、これはまさしくアズライトですな! ふむふむ、ここにちょっとだけ見えている輝きはマラカイトとお見うけ致しますが、いかがでありまするか?」
空のへんてこな言葉に合わせながら「まさしくその通りにございまする」と時代劇風(?)に深々とその場に頭を下げながら空の顔を見上げると黒豆が石の猫にすりすりする姿が目に飛び込んで来た。
「黒豆、お前…」
本当に不思議だった。黒豆はその猫形をした石を空以上に気に入っている様子を見せた。
「本当に変わった猫だな…」と思った。
「どうやらこいつを気に入ったんだな?」と問うと「うにゃあ〜」と答えた。
アズライトの猫が来てからと言うもの、空はますます元気になって行った。
そして再びびっくりするような事件が我が家に起こった!
晴れた日の日曜日の朝、自分では一度も1階におりた事のなかった空がパジャマ姿のまま階段の下に立っていたのだった!!
オヤジも母ちゃんも俺もそりゃあもう嬉しくて嬉しくて仕方なかった。
あんなにひ弱だった空がこんなにしっかりと立っているだけで俺達には充分過ぎる奇蹟だった!
だが奇蹟はそれだけで終わらなかった。
なんと空が言うには黒豆に呼ばれたから下に降りて来たらしいのだ!
朝、目が覚めると黒豆がじっと自分を見つめていて「おいで!遊ぼう!」と頭の中に声が聞こえて来たようなそんな気がしてドアを開け、黒豆を追い部屋の外へ。
すると階段の下にはすでに降りて自分を待っている黒豆の姿が…。
気がつくと自分で階段を降り、俺達のいる1階に空はやって来ていた!
両親は涙声になりながら笑っていた。
母ちゃんもオヤジも最高に素敵な笑顔だった!
俺も黒豆に感謝している!こんなにみんなを笑顔にしてくれたから。
そして数日後、今度は空の部屋に人に慣れた青いセキセイインコが舞い込んで来た!!
空「今度こそジュリアンだ!」
オヤジ「却下!こいつは煮豆だぁっ!!!」

陽射しが眩しい初夏、俺と空とオヤジと母ちゃんと黒豆と煮豆は今日も仲良く暮らしている。
明日から空もやっと学校に通える事になった。
こんなに嬉しい事はない。
きっと黒豆とあのアズライトの猫(ようやく名付けられた名前はジュリアン)のお陰なんだ!
「今まで有り難なっ、これからもよろしくっ!ジュリアン」
「こちらの方こそよろしくなっ!」
「ええー!?今、なんてぇ!?」
おしまい


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