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パワーストーン物語
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「ラッキー!さぁ、早くこっちにおいで!アナタの大好きな骨付き肉をあげるわ!」
飼い主の嬉しいこの呼びかけに、もうこの家に十数年以上も大切に飼われているオスのダルメシアンという犬種の毛足が短く白地に可愛い黒いブチ模様が身体中にぽちっぽちっと入った比較的足の長いスマートな体格の犬が「くぅ〜ん」と鼻を鳴らしながら足早にやって来ると、いただいた宝物のようなごちそうを上手に前足で押さえながら夢中になって食べています。
ラッキーのそんな姿を微笑まし気に見つめているミリアは自分をいつもやさしく見守ってくれているアークにもその微笑みを向けました。
穏やかな毎日の中でミリアが頼る事が出来る唯一の男性(ひと)・・。
早くに両親を失ったミリアにはなくてはならないたった一人の男性(ひと)・・。
すると突然ラッキーをじっと見つめていたミリアの瞳が急に暗くなった事をアークは見逃しませんでした。
「またあの頃の事を思い出しているんだな・・・ミリアが心底楽しいと感じ、笑える日がいつか来るのだろうか・・・俺はいつまでミリアのそばにいられるのだろうか・・・」ミリアの笑顔が曇る一瞬を見つけてしまう度にアークも永遠に本当の幸福にたどり着く事は出来ないのです。
なぜならアークはミリアを一人の女性として愛してしまったのだから・・・。
アークには今のこのミリアと暮らす毎日がだんだんと苦痛にすら感じられるようになり始めていました。ミリアの両親から託された願いはもうほとんど叶いつつあります。
もうすぐ二十歳の誕生日を迎えるミリアはいつか誰かの元へと嫁ぎ、長きに渡り親代わりを務めてきたアークの役目も終わるのです。
ミリアの笑顔を曇らせる事なく、薔薇色の未来に導いてくれる男性が現れた時がミリアとアークの本当の意味での別れ…旅立ちの時でした。
ミリアが無事に二十歳の誕生日を迎えてからしばらくしての事です。
何かが吹っ切れたように晴れ晴れとした顔をしているミリアの微妙な変化にアークは気付いてしまったのです。考えてみれば自分は今までミリアの顔色ばかり伺いながら、がむしゃらに生きて来ました。
そのミリアももうりっぱなレディ・・・。
あの瞳の輝きはもしや・・・恋!!?
アークはとうとうこのお屋敷から出て行く日が近くなっている事を悟りました。


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