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パワーストーン物語
B
「私...女の子...帽子..」
そんなうわ言を繰り返すローラは、意識不明のとても危険な状態です。
「あぁ、ローラ!!どうしてこんな事に...!?」
それから幾日の時が過ぎてもローラはなかなか意識は戻りませんでした。
こうなってしまうとエリックは今更ながらローラになんでもやらせていた自分を後悔せざるを得ません。
「ローラ..ごめん..本当にごめん...」
エリックはあの大きな木をまじまじと見上げると
「こんな木、大人でも登る事はとても無理じゃないか!!?なのに俺ときたらローラに…ローラに…」
悔やんでも悔やんでも、今まで一度たりともローラを女の子として見た事も友達としてやさしく扱った事さえもなかった自分が一番悪かったのだと言う事実だけが胸に迫り、この先どうすればいいのかも自分にどんな事がやれるのかも思いつかず、ただ、街の中をとぼとぼと歩いていました。
街の外れまで行くと、一人の老婆がぼんやりと川を眺めている姿が見えました。
その老婆はこの街でも有名な頭のおかしなばあさんと言われていて、家族もなく、たった独りで川ばかり眺めているのです。
「この川に何かあるの?」いつもの自分ならこんな汚いばあさんとは話すだけで自分まで汚れてしまいそうだからと遠避けてしまっていたのでしょうが、今日に限ってはつい口が喋りかけてしまったのです。
すると老婆は酷く哀しそうな目を向け、エリックにこう言いました。
「私がまだ若く今では考えられないぐらい美しかった頃に、この川の前を歩いていたら急にぱちんと音がしたかと思うとネックレスの紐が切れてある大切な人から貰ったネックレスがこの川の中に全部転がり落ちてしまったのさ…ネックレスをくれた人は死に、私は昔この川で溺れてしまってからは水が恐くて落ちた玉を一粒も拾えやしなかった…たった一粒でいいから私の命が尽きるまでに拾ってから死んでいきたいから毎日ここに来ては自分と戦っているのさ…」
「自分と!!?じゃあ、もし、僕がこの川のどこかでそのネックレスの一粒を見付けられたら、もうここから川を眺めていなくてもいいんだろう?」
「それは本当の事を言うと無理な話なのさ…あれからかなりの年月が経ち、川は幾度も増水し、周りの土砂も崩れ随分とここらの様子も変わってしまった…たとえ私が川に入れたとしても見つけだす事は不可能だったのさ…」


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