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パワーストーン物語
A
「ローラ!この女の子の帽子が風に飛ばされてあんな高い木に引っ掛かったんだよ!でもキミならきっとあの木に登ってこの娘の帽子が取って来れるだろうと思って呼びに行ったんだよ!」
見上げると木は高くそびえ立ち、一番枝が細くなっている先にドレスとお揃いのピンク色の帽子が引っ掛かっています。
「まさか私にあれを取って来いと言うの!?もしも私が足を滑らせて落ちても私なら構わないとでも言うの!!?」
ローラは心の中でそう叫ぶのですが、覚悟を決めて平気そうに「よ〜し行くよ!」と笑うと大きく太い幹に足をかけながら、とても女の子だとは思えない恰好で大股で木にしがみついて必死に登って行きました。
どこからか近所の子供達が集まって来てローラの姿を見て笑う声が聞こえます。
女の子は自分がこんなに必死なのにまだ泣いています。
それでも引き返す事だけは選ぶ訳にもいかず、どうにか上までたどり着くと今度は横に延びた枝を目指してイモ虫のように這って行きました。
自分のぶざまな姿よりも、あの娘の帽子を無事に取ってあげる方に全神経を傾けたのです。
そしてようやく帽子に手が届くと、ほっとしたのでしょうか…
その瞬間、身体がつるりと滑って枝に足と手を絡めたまま一回転してしまったのです。
「危ない!!」誰かがそう叫んだけれど、ローラの身体は木にぶら下がったおサルさんのようなとっさの身のこなしで落ちませんでした。
誰もがほっとしていると、女の子の帽子はふわふわと下に堕ちて行き、エリックは女の子に帽子を拾って渡してあげました。
そばでその様子を見ていた子供達も喜んでその姿を眺めていましたが、女の子は無言でローラの方をまったく見ずに帽子を持って帰ってしまいました。
ローラは身をよじった瞬間、その事に気付き、身体の力が抜けるようでした。
「何の為に...」
そう呟いたかと思うとローラの体重を支えていた枝が突然ぽきりと折れ、そのまま身体は真っ逆さまに落下し、地面にたたき付けられてしまいました。
「ローラ!!!」
そしてローラの魂はその時空高く飛んで行きました。、身体と魂が別れ別れになってしまったのです。
近所の人の知らせで駆け付けた両親は救急病院へと運ばれたローラの傷ついた姿に愕然と肩を落としました。


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あきゅろす。
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