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パワーストーン物語
A
そして遠くの海に身を投げ出しました。
ところがそれでもミリアは死ねなかったのです。
ミリアはある漁師の網に引っ掛かりました。
そしてミリアを助け上げたのがミリアの今の夫のケビーでした。
ケビーは口数も少なく、巨体でまるで熊のような風貌ではありましたが、ミリアの世話を黙ってやり、ミリアには決して触れようとはしませんでした。
ケビーは漁師達が暮らしている村から外れた場所に独りっきりで誰とも関わらずに暮らしているようでした。
ミリアが来てからはミリアに部屋のほとんどを与え、自分は納屋で過ごしています。
「こんなに私を尊重し、自由にさせてくれる男性がこの世にいるなんて思ってもいなかった…」
ミリアは次第に元気を取り戻し、ケビーといっしょに平穏な毎日を送るようになりました。
ところがミリアの幸せもそう長くは続きませんでした。
漁師達の住む村には女は少なく、男ばかりが世帯も持たずにあぶれておりました。
そんな飢えた村人の目に美しいミリアがとまらない訳がありません。
次第に静かだったケビーの家も次から次へと訪ねて来る村人に追い掛けまわされる毎日となりました。
ある日漁から帰って来たケビーにミリアは頼みました。
「お願い、ケビー!私を貴方の妻にして下さい!そしてここからどこか遠くに連れ出して下さい!どんな所でもいい…貴方といっしょに可愛い子供を産み、育てて行く普通の暮らしがほしいのです!!」
ケビーは黙ってうなづくと、ミリアを連れて夜のうちに荷物をまとめてある街へと向かったのです。
その街にはケビーが昔家族と暮らした家がありました。
ケビーは事故で両親と妹を亡くし、独りでその街を離れました。
そこでミリアと二人で暮らして行こうと決めたのです。
ミリアは相変わらず街の男どもに追い掛けられる事もあったけれど、ケビーが全力で守ってくれましたからなんとか乗り越えて行けそうな気がしました。
「やっと私にも人並みの幸せがやって来たんだわ…」
そう思って安心したのも束の間、なんとようやく見つけた愛する夫ケビーが戦争に行かねばならなくなったのです。
ミリアはケビーに「この街を出ましょう!貴方に今戦争に行かれては私の身はどうなってしまうかさえ分からないのです!どうか私を独りにしないで下さい!老いて世界中のどの男性であろうと醜くなった私を奪おうと思わなくなる日までどうか一緒にいると言って下さい!」


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