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パワーストーン物語
C
「今度の指輪は何色かな?」
せっかくなので開けてみると、黄緑色の指輪が出てきた。
ばあちゃんはこの宝石がどんな名前の石なのかも手紙に書いていなかった。
女の子だからそんなことは当然知っていると思ったのだろう。
これが尚美とペリドットの指輪との出会いだった。
はめてはみたがすぐに外しケースにしまい引き出しの奥にしまった。
尚美には、それよりもそこにいっしょに入っていた仕送りの方がずっと嬉しかった。
母が奮発してくれたのか、今月はなぜかいつもより一万円も多かった。
「ラッキー!なんだか今日はついてる」
尚美は本をくれた男の事を思い出していた。
「そうだ...名前くらい聞いておけばよかった...ちゃんとお礼の言葉も言わなかった気がする...顔はそれ程よくはなかったけど特別悪くもなかったような...」
尚美はあやふやな記憶を辿ってはみたが、あまり記憶に残っていなかったのでやっぱりたいした事はなかったのだろう。
それから2.3日して、尚美は書店の倉庫に眠っていた宝石の本を見付けるのだった。
ぱらぱらとめくっていると山梨のばあちゃんから貰った黄緑色とそっくりな宝石が載っていた。
「あの宝石って『ペリドット』って名前だったんだ..」
尚美は隈なく本をチェックしたが、あれと同じ色の宝石は発見出来なかったので、たぶん間違ってはいないだろう。
そして家に帰り、指輪を右手薬指にはめてみた。
なんとなく慣れないのでこっ恥ずかしい感じだったが、ダイヤやルビーよりはずっと馴染めそうだった。
石は小さめで丸くカットされていてひっかかりもなく、がさつな尚美はその日からペリドットの指輪をはめっぱなしにしてつけている事さえ忘れてしまうのだった。
ばあちゃんにお礼の電話をかけた時
「毎日つけて大学やバイトに行っているよ」
と、言うもんで、ばあちゃんは喜んで「また買って送るから!」ときかなかったが
「私はあんま宝石には興味なかけん、もう送らんで!」と、ついキツイ事を言ってしまった。
しかし、ばあちゃんは尚美がたった一つでも身につけてみる気になってくれた事の方が嬉しくて、またペリドットのアクセサリーを買う気になっていた。


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あきゅろす。
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