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パワーストーン物語
B
それからエリーナは、全身打撲と骨折がひどく特に足の神経がやられ麻痺したまますっかり歩けなくなってしまいました。
幸い屋敷内は段差は殆どなく、車イスを使う事でなんとか暮らしてはいけましたが、日に日にやつれて行くエリーナの車イスを押しながら、ミリアと犬のラッキーを連れて散歩に出るアークを時折どうしようもない不安の波が襲いました。
まだ完璧に建築の世界を学んだ訳ではない自分・・・。
その未熟でまだ若い肩にはあり得ない程大きくて重い責任がずっしりとのしかかって来たのです!!
でもアークの本心はこんな風でした。
実はアークはエリーナを初めて見た時から好きになってしまっていたのですが、それは叶わない恋に違いありませんでした。
幸せな家庭を壊すつもりはまったくなく、ただいつか自分もエリーナのようにやさしく美しい女性と結婚し、こんな家庭を築きたいと漠然と思い描いていただけだったのです。
それなのに今はロジャーだけがこの世からいなくなりエリーナとその娘と愛犬とで仲良く暮らしているのです・・・。
時にはこんな風に考えてしまう事さえあります。
もしや自分はいつの間にか悪魔にロジャーだけが消え失せろと、そしてエリーナと暮らせるようにと願いはしなかったかと・・・。
そんな罪悪感に苛まれていても三人と一匹の暮らしはアークにとってはとても幸せなものでした。
ところがそんな幸せも長くは続きませんでした。
なんとエリーナは事故の後遺症で数年後には天国へと旅立ってしまったのです。
自分にそっくりな娘だけを一人残して・・・。
アークは最後にエリーナに誓いました。
ミリアが二十歳になるまでは自分がそばにいてここでミリアを育てて行くと・・・。
大人になったミリアは日に々美しくなって行き、初めて会った日のエリーナとそっくりになっていました。 
あの大事故にもなんともなかったダルメシアンの仔犬は「ラッキー」とアークに名付けられてミリアと共にすくすくと成長して行きました。
 でもラッキーの姿はミリアには辛い記憶を蘇らせる日もありました。 
母の誕生日にやって来た犬・・・ 父を失った日にやって来た犬・・・
母の大好きだったディズニー映画101の犬・・・。


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あきゅろす。
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