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パワーストーン物語
A
「るりちゃん、アナタ、9月に生まれているからるりちゃんていうのかしらね?」
「いいえ・・・お父ちゃんが・・いえ、父が浅丘るりこのファンだったからでそこから・・・」
「そう・・・この青い石はラピスラズリっていう石なんだけどるりちゃん知ってた?」
「いいえ、しりません・・見た事も聞いた事もありませんでした・・・」
「アナタ正直ねっ!この石の和名は瑠璃っていうのよ!で、9月の誕生石は宝石の中でも高価なサファイアなんだけど同じ青色でラピスラズリも9月の誕生石と言われているからプレゼントにはぴったりだと思った訳!無論、サファイアは高い石だから彼氏が出来た時にでも買って貰えばいいと思って今回遠慮させてもらったのよ〜。こっちならそんなに高くないしねっ!」
「はぁ、有り難うございます」 
るりは店長からネックレスを受け取った時、一瞬石の色がくすんで見えたような気がしたが、早速つけて喜んでみせたのだった。
「宝石なんて初めてだ・・私の名前と同じ石なんじゃけん、大切にせんといかんな・・・」
ボロアパートの部屋でもう一度貰ったネックレスをつけている自分の姿を鏡に写してよくみた。
けれど初めて見た時よりも更に鮮やかさがなくなった気がした。
「この明かりのせいかな・・・?」それでもたいして気にせず、その晩からお風呂に入る時以外はそのネックレスをつけたままで寝た。
それから毎晩のようにるりは悪夢をみるようになってしまった。 
夢の中のるりはいつも失敗を繰り返すのだった。
ある時はお客様にお金を貰わずに商品だけを渡してしまい店長からこっぴどく怒られて泣きながら謝っている夢だったり、ある時は大好きな野田君が自分を力いっぱいぐーで殴ってきたりだとか、また自分がうっかり同じブティックで働く人に暴力をふるったりと普段のるりには考えられない事件に見舞われてしまう嫌な夢ばかり連続で見続けたのである。でもるりには何が自分に起こったのかまったく分からず、原因を追求する事なく大学に通いバイトも休まなかった。 
それから月が変わり10月に入った頃になるとようやく悪夢は収まり、前と同じ生活が送れるようになって行った。
「あの悪夢はなんだったんだろう・・・」
するとなにげなく見た鏡に写った自分の首にかけられたネックレスの色が深く綺麗な青色に変化している事に気付くのだった。
「この石・・・もしかしたら色が変わる石?!」
るりは驚きと感激で嬉しくなり自分と同じ名
を持つラピスラズリという名の石を心から愛しく感じられるようになって行った。
それからだろうか・・・るりはなんとなく自分に自信が持てるようになりブティックに来るお客様からも「あの店員さんにまた見立てて貰おうかしら・・・」と心をつかむ程の存在になって行った。 
るりは変わったのだ!
店長に教えられ、うわべは女になっていてもどこかるりには足りない所があったのだが、それをもなんだか長所に出来るように内面から変わって行ったのだ!!
るりは思いきって大好きな野田君に告白もした。
今までのるりだったらきっと出来なかっただろう・・
自分から好きだと伝えるなんて大それた事は・・・。 
結果は見るまでもなくあきらかだったが想いがつのり、黙っていられなくなってしまったのだからしょうがない。
その後野田君からこっそりその話を聞かされた店長はるりを哀れに思い野田君を別の店舗に移動させ、るりは野田君に顔をあわせる度に気まずく辛い苦しみからも解放されていた。
その頃には会社も、もうるりにえさを送りつけるような失礼な事はしなくなっていた。


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あきゅろす。
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