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パワーストーン物語
B
少し機嫌を直し猫なで声まで出す公子でしたがやはり本当は二人のように自分も誕生石の指輪がほしくてほしくてたまりませんでした。
いくら姉が初任給から奮発して素敵なブラウスを自分にプレゼントしてくれてもそれはそれ、これはこれなのでそう簡単にはあきらめられない気分でした。
それにたまに母が美しいビロードの箱に入ったトルコ石の指輪を嬉しそうに眺めている姿を目撃してしまったりだとか梢の指がキラキラ光ったりした時などはもう発狂したくなる程の思いがこみ上げてくる程でした。
頭の中は二人の指輪を見た日から 「私だって女の子だもん、キラキラ宝石の指輪が絶対ほしいー!!!」と、頭の中にはその思いしかないぐらいにいっぱいになってました。 
でも公子が今回だけはなぜだか父に自分も指輪がほしいとねだらなかったのが母には不思議でなりませんでした。
やはり姉からのあの言葉がこたえているのか、公子の思いは心の中での叫びだけでなんとかとどまる事が出来ていました。
けれどやさしい父は思っていました。
公子が指輪をほしがれば女学校を卒業していなくても就職出来なくてもいつでもすぐになんらかの理由をつけて指輪を買ってあげるつもりでいました。 
なのに・・・なぜ・・・?どうしてこんな早くに・・・!?  
公子はその日もいつもと変わりない朝を迎え、女学校に登校して1時間目の授業が始まるなり学校に姉、梢からの電話が入り、職員室に呼び出されてしまうのでした。
また姉の服をこっそり着た事がバレたのだろうか?と不思議に思いながら電話に出ると受話器のむこうの姉はなぜかひどく怒っているような口調で公子にこう言いました。 
「なんでもいいから今すぐ帰って来なさい!学校には家の事情で早退するって言いなさい!」 
「家の事情って?」 
「いいから!帰れば分かる事だから!とにかく早くよ!」 
「うん、分かった」 
姉のいつになくキツイ言葉やただならぬ気配に公子は担任の先生に事情を話すと大急ぎで自宅へと駆け出して行くのでした。

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