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パワーストーン物語
C
自宅に着くまでに公子はいろいろな事を考えてしまうのでした。
真っ先に頭をよぎったのは、一番末の弟の保夫が最近風邪をこじらせてずっと微熱が続いて元気がなかった事でした。 
「やっちゃん!どうか無事でいて!!」 
公子はぎゅっと拳を握りしめ、唇も強く結びながらいつもなら駆け足でも10分はかかる道のりをその半分の5分で自宅に着く事が出来ました。 
それだけ必死であったのでしょう・・。 
「やっちゃんー!!!やっちゃん!!?」 
玄関を勢いよく開けると同時に公子は自宅の中に向かってありったけの大声をあげて叫びながら入って行くと、姉が狂ったような叫び声で自分を呼ぶ声に驚き、やっちゃんが泣きながら奥へと逃げて行く声が聞こえてきました。
いつもの甘えた泣き声が聞こえた事にほっとした公子は、玄関のあちこちに自分の靴を脱ぎ捨てると家の中へと急いで入って行きましたが、遠くでかすかにやっちゃんのすすり泣く声がする以外にはいっこうに何も聞こえてはきませんでした。 
「いったいどうしたんだろう・・・? 」 公子は電話をくれた姉の姿を求めて一階を隅なく探し回りましたがどうやら誰もいないようなので二階へとゆっくりと上がって行きました。
すると父さんの部屋に座る姉の後ろ姿が見えました。 
心臓がいきなりわしづかみされたような衝撃が公子の胸に走りました。
うなだれるように倒れ込む母さん・・・ 一つに固まって泣いている弟達・・・
黙ったまま座る姉の前に敷かれたお布団の膨らみは誰かが寝ている証・・・ 
顔をすっぽり隠すようにかけられた真っ白な布の下には誰かが眠っていて・・・ 
そういえば、今朝、父さんはいつもの時間になっても起きては来なかった。
私はてっきり疲れているんだと思って起こさずにそっと身支度を調えて父さんの寝ている後ろ姿を横目で見ながら女学校へと出かけて行きました。
すると側にやってきてすねるような目でこちらをみるやっちゃんが公子の腕をほんの少しだけ引っ張って言うのでした。
「父さんはどうして動かないの・・・?」
まだあどけない表情でその大きな瞳には涙をいっぱいためてどうして父さんが急に動かなくなったのかを理解出来ずに姉の返事にすべての期待をこめて聞いてくるのでした。


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