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パワーストーン物語
C
「いいから開けてみてよ!」
有紀にせかされた琴美はちょっぴりわくわくしながらその小さな箱を開けた。
プレゼントは開ける瞬間が堪らなく嬉しい。
たまに自分の好みじゃない物を貰ってこまる事もあるが、自分の好みを知り尽くした有紀からの物であるから安心がある。
開けてみると中にはシルバーの薔薇のようなデザインがエレガントな幅広の指輪が入っている。
中心の薄紫色の石はなんだろう..?
そう思いながらいろんな指にはめてみると、薬指にぴったりのサイズだった。
「ありがとう!!これ凄く素敵!…だけど高そう...本当に貰ってもいいの?」
口ではそう言いながらも琴美はもうすっかり自分の物になった気で箱をバックにしまい、自分の指をいつまでも眺めている。
「うん!それ、社員割引で買ったから安かったの」
そう言えば有紀はデパートのジュエリーコーナーで働いていた事を琴美は思い出した。
「ところで、その石の名前は知ってる?」
「さぁ..私が紫が好きだからこれにしてくれたんでしょ?」
「それもあるんだけどその石は『アメジスト』と言って紫色をした水晶なの..アメジストは傷ついた心を癒してくれる宝石だからなんとなく今の琴美には必要かなって気がして...
そんな時、この薔薇のシリーズが秋の新作で入荷してきて、他にもガーネットやアクアマリンがあったんだけど気が付いたら琴美にあげようってアメジストを買ってしまってたんだ...」
「有紀...!」
琴美はその場で涙が溢れ出そうになるぐらい嬉しかった。
「ありがとう〜!絶対、大切にするからね!」
「うん!」
用事が済むとなぜだか晴れやかな顔をして有紀は帰って行った。
琴美も同じように晴れやかな顔になる。
好みや考え方や感覚が違っても、辛い時や苦しい時にたった一人でもその気持ちを理解してくれようとする友達がいると救われる。
琴美はこの指輪をとても大事にし、変化のない毎日を送り続けたが、なんとなく前よりもっと穏やかでやさしい気持ちが生まれ始めている気がする。
「琴美の辛い気持ちが一日も早く癒される事を願ってこの指輪を贈ります。有紀」
「素敵な指輪を有り難う..これからもずっとずっとよろしくねっ!琴美」
おしまい


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あきゅろす。
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