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パワーストーン物語
D
そして半月たったある日、尚美は大学の図書館で授業で出された課題について調べものをしていた時、自分の取ろうとしていた本と同じ本を先に取った者がいた。
「あ〜あ...仕方ないかぁ...」
確かに同じ大学内なら同じ授業を選択し、同じ課題を出されてここに本を借りに来てもおかしくはない。
そんな事を考えつつも先に本を取った人の顔を見た。
どこかで見たような気もしたが、構わず別の本を探している後ろで声がした。
「尚美ちゃん?」
ガーーン!!?
尚美は大学内に男の知り合いはおろか、同性の知り合いもいない。
それなのに名前を知る者がいる。
まさかこれが都会によくいると言ううわさの『ストーカー』なのか!!?
田舎にもいるかもしれないが、うちの田舎にはそんな者が出た話は聞いた事がない。
震えを抑えて尚美は男に背を向けて無視を決め込んだ。
すると「ひどいなぁ...尚美ちゃん、俺が誰か忘れたのか...あの本は役に立ったのかなぁ..なんて聞いても変態男だから相手にしないってか!?ちっ...」
最初は男が何を言っているのかぜんぜん分からなかった。
「本?本ってまさかあのファイナルクエストの高価な攻略本をくれたあの男の人!!お..お兄さんー!!待ってー!!」
尚美はここを図書館と忘れて大きな声を出してしまった。
「しっ、静かにねっ!」
尚美は小さな声でみんなからいっせいに注意を受けてしまう。
けれど今はそれどころではない!
あの日のお礼も言わず、名前も聞けなかったあの男の人を追わなければならないのだ!
ところが必死に追い掛けた尚美だったが、その日彼の姿を見付ける事は出来なかった。
彼もまた尚美に見付からないようにとダッシュで逃げてしまったからだ。
どうやら男は同じ大学の学生で、同じ科目を選択している事は間違いなかった。
早足で逃げ去ったのは尚美に対して忘れられた事に怒っていたのかもしれない。
それなのにストーカーと勘違いするなんて、自分のようなルックスの女にそんな者が何かしようと付け狙う筈もない。
ついでに間違ってもお金目当てでもない...。
実家は兼業農家ではあるが、そんなに裕福でもなかったのだ...。
尚美は急に自分の失敗が嫌になってしまった。
「お兄さんゴメンナサイ...」


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