APH/novel
Y
「イギリスがやばいんだよ!!頼むから手を貸せ!!」
いつになくフランスが叫んだ。
「頼まれなくたって助け出しますよ!!」
真っ先に踊り出た日本とアメリカに続いて、その場にいた全員が化け物へと走りよった。
そして、イギリスを踏んでいる前足に一斉攻撃を仕掛ける。
だが、動かない。
フランス一人ではなくなったからかかなり微量ながらも蠢くのが多くなった気はしたが、イギリスを助け出すには力が足りない。
「がはっ…!ぅ、こ…いつ、は…倒せ、ッる……!!」
ふと呪文を中断してイギリスが血を咽ぶ口でそう皆に告げる。攻撃をやめないまま、戦いをやめないまま日本が尋ねる。
「魔法ですか!?もう魔法は使わないで下さい!大丈夫!大丈夫ですから…!今助けますから…!!」
「…ばぁ…かッ!死な、ねえ…よ俺は…ッ!…ッがは…!、い…から…!時間稼ぎ…しろ…!!」
そのまま問答無用で呪文を再開させる。日本の言葉だってもう関係無かった。
ただ、目の前のみんなを、…大事な人を護りたかった。
(後、もう…少し……!)
震える声で。
血が上ってきてうまく声が紡ぎ出せない喉で。
もってくれ。みんなが守れるまででいいからもってくれ。
悲痛なる叫びをただ噛み締めながら、イギリスは最後の呪文を叫んだ。
「消え去れッッッッ!!!!!!」
辺り一面に激痛で目を開いていられない程の閃光と旋風が走る。
化け物の叫び声なのだろうか。断末魔のような鳴き声とともに消えていく。
イギリスが宙へ差し出した手が地面にぱたりと落ちる頃には、まるでなにもなかったかのように静かな廊下になっていた。
ただ、響くのはヒューヒューといった甲高いイギリスの呼吸だけだった。
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