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APH/novel
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「……。……今日は、……まだだから、…たぶんまだ怒ってるんだよな。」



遠くに放置していた携帯を手に取り着信履歴のページを開く。相変わらず仏頂面で可愛いげのない携帯だ。その着信音を高らかに歌い上げる事はまだない。変なところだけ持ち主に似やがって、むっかつく。
今日のかなり俺は参っているみたいで朝日だけじゃ飽き足らず携帯にまで文句をごねるみたいだからこれは重症だ。


(……何時もだったら電話が来てもおかしくない頃だ。)


ちらと携帯の右上端の時計を眺める。13:32。着信音は歌ってくれないみたいだがあくまでも持ち主に似やがるのか性能だけは生真面目な様だった。

いつも喧嘩をしてしまった時、どちらに原因があるかに関わらずフランシスから翌日の昼頃になれば必ず電話が掛かってくるのだ。
そして、どんな始まりでどんな喧嘩の内容だったかも関係無くあいつが折れて先に謝ってくるのだ。

自分が素直になれないからそれに何度も甘えてしまっていたことは重々承知していた。していたのにこうなってしまうまで俺はロクに自分が折れて謝ったことは無かった。


(こっちが悪くてもごめんってあいつは先に謝る……。いつもいつも。きっとそれは俺が素直になれないからだ。)


冷静にあいつのことを考えてみると自分のしてきた事とあいつが今までしてくれていた事の大切さを知らされて胸の奥に眠る罪悪感が沸々と湧いてくる。

俺はなけなしの勇気を振り絞り携帯のfのページを開いてみるのだがそこから指が動かない。



(何を、言えばいいんだ?)



こんなとこで指が固まってしまう位だ。きっと掛けてみたとこで喉が震えて声が出せない。話すら出来ない。いつもみたいに電話のかかってこない様子からするに、あいつは今回絶対怒っている。そんな時にだんまりを決め込んだ電話なんて嫌われる。絶対嫌われる。


ざわざわと胸の奥が騒ぎ出すのと同時にビュウゥ、と窓の向こう側から風の音が響いてくる。
驚いて目をやれば木々達が強風に煽られてその大きな体躯を右へ左へ揺らめかせてかわいそうな事になっていやがった。



(……すんげー最悪な天気だな今日は。)



はあ、とため息をひとつ決め込んでからまた携帯の画面へと目を写す。

さあどうしよう。



勇気が、出ない。






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あきゅろす。
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