APH/novel
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「…う…ッく、っぐ…ひっ…ぐ…う…うぅ…ッ…!!ッう…!イギリス…っイギリスぅ…!」
「……っ…ッッ……!!っどうして…何で……イギリスさんが……ッ」
「ひっ…うっ……!っ…!嘘…!嘘ですよ!…こんなの、あんまり、ですよ……っ…!」
無駄に声が響き渡る洋館の中の一室。アメリカとカナダと…、珍しく日本の嗚咽が残酷にもこだましていた。
一点の染みすらない真っ白なベッドにイギリスが横たわっている。日本が先程かけてやった毛布のお陰で見るに耐えなかった体の傷は隠されて、本当にただ眠っているだけのようにすら見えるぐらい綺麗な顔。
あの後、イギリスをフランスがお姫様だっこにして落ち着ける部屋を探していた。その途中でもう一方だったグループと遭遇し、晴れて全員合流出来た。
……いや、正確には出来ていないのだが。
カナダに至っては話を聞くよりも先に信じられないとばかりに目を見開いて頭を抱えていた。
不思議だよな。ふとフランスは思う。
――俺を庇ってこんな事になったのに、こいつは。
「…無茶をするな。日本…お前はもう戻った方が良いだろう。アメリカとカナダも……。」
「やです…!嫌です…!だって、私達皆生きてるのに…イギリスさんだけ…イギリスさんだけこんな所にひとりぼっちで…!」
「……日本、大丈夫だよ。イギリス…後悔してないよ。見たでしょ?」
「イギリスさんが後悔する必要はありませんよ!…する必要が有るのは…っ…私達ですよ…。」
痛々しく肩をわなわなと小刻みに震わせながら、今まで中国やイタリアすら聞いたことのないような金切り声で悲痛な叫びをする日本。途中で声は甲高い奇声のようになってしまい、その場に崩れ落ちてはイギリスの髪をくしゃりと触れて。ベッドに凭れて泣きじゃくる始末だ。
ああ。日本もこいつの事、好きだったんだっけ。
フランスは、ただただ覇気の無い虚ろな目でそのやり取りを見る事くらいしか出来なかった。
日本はこれからイギリスが死んだ事実を何年も、いや下手をすれば何百年、もしかしたら何千年背負い続けて苦しむかもしれない。
でも、俺に比べたら日本は偉いし凄い。
その答えに到達した時、フランスは気分が悪くなって、頭が重たくなるのを感じる。
(…俺はまだ、事実から目を反らしてるよ。まだあいつが帰ってくるんじゃないのかって薄ら…。)
目の前にその亡骸があったとしても、その事実を背負うことが出来なかった。
頭では理解出来るが、頑張ってその事実を飲み込もうと躍起になる度に、吐き気のような、貧血の時のような。よくは解らないが不快感と頭の重たさから足がふらつくのを感じるのだ。
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