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ヒトリ季節企画
土方十四郎
3月14日。ホワイトデー。

去年のお返しは豪華な食事に私好みのお財布。

今年と去年は何か違う気がする。






どうも調子が狂う。

あれからというもの、身体を重ねる回数が増え、しつこい位の情事に私の身体が悲鳴を上げた。

「も、無理…っ!」

懇願しても打ち付ける腰が速度を増し、絶頂を迎えさせられる。

あ。

またナカに出された。

避妊具は苦手と言ったけど、別にナカに出さなくても…とは本人には言えず。


『初めから俺ァ結婚前提でおまえを選んだんだ』


1ヶ月前に囁かれた言葉があるから…

ぎゅっと土方さんの背中に手を回して、息を整えた。



あの言葉の意味を毎日のように考えている。

結婚前提ってことは、婚約中なのかとか。

でもプロポーズはされてないとか。

いやでも、あの言葉がプロポーズなのかもしれない、とか……

考えてもしょうがないのに、ぐるぐるぐるぐる頭の中を駆け巡っていた。

「どうしたらいいのー…」

なんだこの宙ぶらりんな気持ち。

もやもやとドキドキが目まぐるしい。

こんな時は、本人に電話するのが一番。


夜も更けた頃に土方さんに電話をした。

3コール目で出た土方さんの声が上擦っていて、お酒呑んだ後なんだな、と苦笑する。

「あ?何?14日?」

「はい。日曜日なんですけど空いてますか?」

「あァ。昼からなら」

「よかった」

「迎え行くから待ってろ」

迎えに来てくれるってことはバレンタインデーの時のように、屯所で待ちぼうけを食らうこともない。

テーブルにあるカレンダーに丸印を付けた。



ホワイトデーの約束をした私は浮き足立っていて。

お使いで和菓子屋さんに行っていると、見覚えのある制服が目に入る。

銜え煙草で黒髪って土方さんじゃないですか。

ん?

その横には可愛らしい明らかに私より若い女の子…

なんか渡してるし!なんか近いし!!

「浮気ですかコノヤロー…」

隠れればいいのに、この時の私はどうかしていたのかもしれない。

早足で土方さんのいる場所へ向かい、目が合った途端、口が開いた。

「浮気ならバレないようにしてよッ!!」

「ちょっ、おい!美砂ッ」

「馬鹿!」

何かわめいていたけど知るもんか。

路地に入り、深呼吸した私の腕を、掴まれた。

「何逃げてんだ馬鹿」

「馬鹿はどっちよ!」

プイ、と顔を背けて腕を振るう。

そんなんで離してくれるとは思ってないけど。

「あーー何?やきもちか?嫉妬してんのか?」

…何この人。

声音が凄く嬉しそうなのは気のせい?

「誰が嫉妬なんか、」

「ふーん」

腕を離した土方さんが煙草を銜えて火を点けた。

「なァ」

目を伏せた土方さんが煙を吐き出す。

「近藤さんは知ってるよな?」

「あ、はい。局長さんでしょ?」

「さっきのは近藤さんが惚れてる女だ」

「は?」

どうでも良さそうに私を一瞥し、また煙草を銜える。

「どうしても渡したいものがあるって頼まれたんだ」

「はぁ」

「チョコも貰ってねーくせにお返しもクソもねーよな」

苦笑した土方さんが灰皿に灰を落として顔を上げた。

「それに、この前言ったじゃねェか」

「え、」

ニヤリと口角を上げた土方さんが私を見据える。



「いずれおまえを嫁に貰うって」



なんでそんなに自信満々な顔で言うんだろう。

私なんか今の言葉で心臓がおかしなことになってしまっているのに。

泣き出しそうな顔を隠すように、土方さんの傍に寄る。

煙草の匂いと土方さんのぬくもりに安心した。

ぎゅっとしがみ付いた私の耳元で。

「何か言うことは?」

低い声にピクリと身体が反応する。


「…私の旦那様は、土方さん?」


「旦那様って響きエロいな」

そうボソッと呟いた土方さんがむっとして顔を上げた私の頬を撫でた。


「大事にする」


囁かれた言葉に頷くと同時に、口付けが落とされた。





貴方が私を甘い言葉で求めてくれた。

これからもずっと貴方の傍に居れることが。

こんなにも嬉しいことだってことはまだ教えない。



20100310

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あきゅろす。
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