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ヒトリ季節企画
土方十四郎
マヨ党の彼にはマヨネーズ多目のチョコレートを。

ってマヨ党ってなんだよ…

2月14日は決戦の日。






屯所の前がえらいことになっている。

バレンタインデーが日曜日というのも災いしてるみたいだ。

例に漏れず、愛しの土方さんに手渡す為にこうして屯所に来てしまった私…

…彼女だよね?

私彼女だよね?

悲しくなったから携帯電話を取り出して、リダイヤルの一番上にある名前を押す。

「…はい土方」

「何処に居るんですか?」

「あ?」

「私今屯所前に居るんですけど、人が多くてなんか悲しくなっちゃって…」

「馬鹿か。去年も同じことしてなかったか?」

「去年は土曜日だったからここまで多くなかったんで」

電話越しに溜め息を吐かれ、本当に泣きたくなった。

「もういいです。帰りますね」

「…もうすぐ終わっから待ってろ」

「え、いや危ないですよ?今屯所出たら」

「じゃああそこ分かるか?大江戸マートの公園」

「はいわかります」



屯所から歩いて5分ほどの場所。

公園は先程の喧騒が嘘みたいに静かだ。

ベンチに座り、手に持っていた箱を横に置く。

早起きして作った、マヨネーズのケーキ。

味見なんか絶対できない。

生クリームの代わりにマヨネーズにした代物…

チョコレートケーキの予定が、マヨネーズとチョコを混ぜたら分離してしまったのだ。

スポンジケーキはココアを練りこんでいるけど、恐らくマヨネーズが強すぎて全く分からないのだと思う。

こんなの食べてもらえるんだろうか?

いくらマヨラーと言えども、こんなものを……


あ。あの着流し姿は…

遠くでも銜え煙草の土方さんはわかる。

思ったより早い到着に嬉しくなって頬が緩む。

小走りで近寄ろうとした私の前に現れた1人の女の子が、土方さんの前で立ち止まった。

え?

「これ受け取ってください!!」

よく見れば、すでに土方さんの手には紙袋でいっぱいだった。

「あー、…ここ乗せて」

ちょっ!来るもの拒まずですか!?

私此処にいるのに。

女の子が去って行った後、私に気付いて近付いてきた。

「ワリィワリィ」

…なんでヘラヘラしてんの?

両手一杯の荷物をベンチに置き、私を呼んだ。

「何怒ってんだ?座れよ」

強く腕を引かれ、躓きそうになった私は土方さんに抱き留められる。

甘い、匂い。

「…チョコ食べた?」

「いや、食べてねェが」

「甘い匂いがする」

「そうか?おまえからマヨネーズの匂いしかしねェんだけど」

くんくんと鼻を首元に擦り付ける土方さんが擽ったくて、思わず仰け反った。

「あん?真昼間から盛ってんじゃねェよ」

「盛ってないですっ」

慌てて土方さんから退いてベンチに座る。

「その箱、」

「あ!そうです。これ土方さんに」

箱を渡すとまた鼻をくんくんと鳴らす。

「マヨネーズの匂いがする…」

「味見はしてないんですけど」

その場で開けられて恥ずかしくなった。

あんな、マヨネーズまみれのケーキ……

「すげ!!マヨケーキ!?え、手作り?すげーな美砂!!」

なんだこの大興奮ヤローは。

でもこんなに喜んでもらえると正直思わなかったから素直に嬉しい。

マヨネーズの上に乗っている苺を摘まんで頬張る土方さんが嬉しそうで、ベンチに置いてあるチョコの山なんてどうでもよくなった。

壊れないようにそっと箱にケーキを戻している土方さんを見ていると本当に嬉しくて。

「土方さん」

「あ?」

丁寧にケーキを元通りに戻した土方さんが銜えた煙草に火を点ける。

「今日は一緒に居れるんですか?」

「あァ。久しぶりの休みだ」



行きたい所はあるか、と聞かれたけど。

早く2人きりになりたくて。

今は私の家に居る。



何かに突き動かされ、私はいつになく土方さんを求めた。

「どうした?」

妖艶に笑う土方さんにまた腰が踊る。

「土、方さ…っ!」

限界が近くて目の前がチカチカしてきた。

「今日は、特別だ」

「え…っ」

聞き返すこともできない程の快感が押し寄せ、土方さんの上で痙攣した私は弛緩した身体を抱き留められると大きく息を吐く。

そして、そのまま土方さんは精を放った。



抱きついて眠ってしまいそうな私の頬を撫でて土方さんが呼ぶ。

「美砂」

「ん」

虚ろな目で土方さんを仰ぎ見ると、少し真剣な顔をしていた。

「よかったのか?」

「え、なにが?」

「避妊してねーぞ」

あぁそんなことか、と私は小さな欠伸をする。

「土方さんは後悔してるの?」

「いや」

その答えに微笑んで、ちゅっと触れるだけの口付けをした。



「土方さんのこと大好きだから」



特別をありがとう、と続ける。

「…こちらこそ」

返答がおかしくて、思わず笑う。

避妊をしていた土方さんと、避妊具が苦手な私が悩んでいたこと。

それが原因で肌を重ねることはそんなになくて。

「言っとくが」

抱きついていた私の肩に顔を寄せているから表情は分からない。

けど。

土方さんの言葉に涙が零れそうになった。





欲しい言葉をいつだってくれる。

貴方を求める私の心をいつも甘く満たしてくれる。

そんな貴方の傍にずっと居たい。



20100210

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あきゅろす。
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