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ヒトリ季節企画
坂田銀時
甘党の彼には糖分多目のチョコレートを。

と思っていたのに。

2月14日に寝坊するなんて。





日曜日ということもあって、前日に夜更かししたのがまずかった。

気がついたら時計は天辺を指していて、慌てて飛び起きた私の目に入ったのは携帯電話の小さな光。

そして、留守電の表示。

『あー、銀さんだけど。…いや別に用事はないよ?美砂ちゃん何してんのかなーと思って』

10時過ぎにはこの留守電をくれている愛しの銀さん。

ごめんね、とリダイヤルを押し、万事屋に電話をした。

出たのは新八くんで、銀さんは留守とのこと。

電話を切り、昨日の晩から用意していたチョコたっぷりケーキを作るために台所へ行く。

付き合って二度目のバレンタインデー。

去年は作る時間がなくて買ったんだけど、今回は手作りに挑戦なのだ。

苺を乗せて完成したチョコレートケーキ。

ゆっくりと箱に入れてリボンを結ぶ。

「できた!!」

初挑戦にしては見た目はバッチリ。

化粧をし、バーゲンで買った新しい着物を着て、クリスマスに銀さんに貰ったネックレスをして、やっと自分も完成した。



銀さんから折り返しの電話もなく、まだ帰ってないんだろうと思いつつも、万事屋に行ってみる。

時間はすでに15時過ぎ。
1日の半分以上が経ってしまっている。

あら。あの銀髪は…

遠くでも太陽に輝く銀髪は目立ってしょうがない。

なんだか嬉しくて頬が緩む。

小走りで近寄ろうとした私の前に現れた1人の女の子が、銀さんの前で立ち止まった。

え?

「これ受け取ってください!!」

可愛らしいラッピングが施してあるチョコらしきもの。

「あー、…誰?」

頭を掻きながら銀さんが首を傾げる。

「そこの甘味処の、」

「あぁ!どうも」

受け取ったよ。受け取ったよあの人!!

私の前で。

タッと去って行った女の子が居なくなると、漸く私に気付いた。

「美砂ちゃんじゃなーい」

むっとした私に気付いているのか気付かないフリをしているのか、その可愛いラッピングのものを持ったままヘラヘラと近付く。

「銀さん、」

「あれ?それ銀さんにだろ?」

私が持っている箱を見ながらにやついている。

「違うもん。これは新八くんにだもん」

「ふーん」

にやついた銀さんと一緒に万事屋に入り、神楽ちゃんと新八くんに箱を渡した。

「これ皆で食べてね。銀さんはたくさん貰ってるみたいだから」

「ちょっ!何それ!!」

「自業自得アル」

「そうですね。あ、銀さん姉上がソレ置いていきましたよ」

テーブルに置いてある箱はお妙さんからだったらしい。

「モテるんだね。銀さん」

ニッコリと笑うと、むっとした銀さんが持っているチョコたちを全部神楽ちゃんに渡し、神楽ちゃんが持っていた箱を取り上げた。

「何するアルか!?」

「俺はこれだけあればいいの」

その言葉が嬉しかったけど、素直になれなくて。

「美砂開けていい?」

「勝手にしたら」

プイ、とそっぽを向いた私に苦笑しながら銀さんは箱を開けた。

「おーーー!!」

「凄いアル!」
「ホントですね!」

「そ、そうかな?」

皆に褒められたらやっぱり嬉しい。

「…あー、新八くん神楽ちゃん?そろそろお妙のとこ行くんじゃないのかな?」

ドキリ。

わざとらしく咳払いをする銀さんに、私の胸が音を立て始めた。

2人きりになる合図。





ソファに座った私の肩に手を回し、ケーキを食べている銀さん。

「甘くて美味ェ。え、手作り?すげーな」

「…電話くれたのに寝坊しちゃってごめんなさい」

平謝りをした私にケーキに乗っている苺を渡す。

「おめー苺好きだろ?」

頷いた私が苺を受け取ろうとすると、肩を抱き寄せられて口付けをされた。

咥内に広がるチョコの味。

「…甘い」

「ん」

渡された苺を頬張ると、甘さが中和される。

「銀さん」

「んー?」

「好きだよ」

「へ、」

素っ頓狂な声をあげた銀さんを見上げてもう一度呟く。

「…今日だけ特別」

恥ずかしいから、顔も見てなんて言えないから…

銀さんの袖を引っ張って耳元に口を寄せた。


「愛してる、から」


面白い位赤くなった銀さんがフォークを置いてそのまま私を胸に抱き留める。

銀さんの早過ぎる心臓の音が耳に響いた。



しつこいくらいの愛撫も口付けも。

貴方も甘過ぎて糖分過多になってしまいそう。

それでも離れられない私は貴方に融けてしまうのだろうか。



20100209

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あきゅろす。
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