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ヒトリ季節企画
後日談〜銀時編〜
「えー、今日だけバイトで入ることになった坂田さん」

「え、」

朝礼の時に紹介されたのは紛れもない、銀さん。

サンタクロースの格好をしている銀さん……

「よろしくお願いしまーす」

ヘラヘラと挨拶する銀さんに私はただただ驚いていた。




「なんで此処に居んのよ?バイト募集してなかったでしょ!?」

「いやしてたよ?」

ホラ、とお店の前に張ってある「宅配サンタ募集」の紙を差す。

「バイトって銀さん万事屋は?」

「いいのいいの」

そう言って私の着ていたサンタ衣装のスカートを捲ろうとする。

「ちょっ、」

「やっぱりそれ短くね?」

こんなところでやめてよーーー!!

他のバイトの子たちが変な目で見てるでしょう!?

「坂田さーん、これ配達お願いしますよー」

店長に呼ばれた銀さんが「はーい」とそちらの方へ向かった。

ほっとした私は急いで持ち場へ戻った。



あの日、サンタ衣装のまま銀さんと1つになった。

だから、この衣装を着る度に思い出してしまってにやけてしまう。


ニヤニヤしているのがバレたのだろうか?

訝しげな顔で店長さんに呼ばれた

「美砂さん、今日は外じゃなかった?」

「あ!そうでした!」

支給された外用の白いファーのついたダッフルコート。

ロッカーから取り出して着込んだ私は、外でケーキを売る。

「おひとつどうですかぁー?」

1オクターブ高い声でケーキを売り捲くる私に、店長がニコニコしながら頷いていた。




「何そのコート!!」

サンタにいきなり言われ、ビックリした私は持っていたケーキを落としそうになる。

「なんだ、銀さんか」

おかえり、と微笑むと「ただいま」と少し赤くなって目を逸らされた。

「そのコートなに?」

「これ?外用のコート。可愛いでしょ?」

ヒラリとポーズをとって見せたら真顔で

「うん。可愛い」

と言われてこっちが恥ずかしくなる。

「な、なんだよー」

あまりにもじっと見るもんだから裾を両手で隠そうとした。

でも、銀さんが口端をあげて「可愛い奴だ」とか言ってお店に入っていったから、残された私は真っ赤になるしかない。

「お姉さん顔赤いよ?大丈夫?」

ケーキを選んでいた中学生くらいの女の子に心配される始末…

また配達用のケーキを持ってお店を出てきた銀さんと目が合い、ふっと笑われた。

ちょっ、何何?

銀さんかっこよくね?
いや、カッコイイよね?

配達に出た銀さんの後ろ姿に見惚れている自分が居た。




「終わったーーー!!」

外のケーキを売り捌き、お店へ戻るとショーケースの中には何もなく…

ケーキ貰って帰れない…とうな垂れていると、店長が1人ずつにケーキを支給してくれた。

そして、バイト代も。

これだから短期バイトは大好き。

現金支給だーわーい。

ほくほく顔で着替えようとした私の腕を銀さんが引っ張った。

「銀さん?」

「雪」

外を見ると雪がちらほら降ってきていた。

「わぁ」

外に出て銀さんと見上げる。

手のひらに舞い落ちる雪。

「ホワイトクリスマスだ」

私の呟きと同時に、銀さんに後ろから抱き締められた。

「見られちゃう、」

「誰も見やしねェよ」

お店の電気は消え、周りでは恋人たちが囁きあっている。

銀さんの息が首筋にかかり、頬に触れる髪の毛が擽ったい。

「今日の銀さんはサンタさん?」

「サンタで彼氏ですけど?」

「じゃあ、1つお願い聞いてくれる?」

抱き締められたまま、クルリと銀さんの方に向き合った。


「今日はずっと一緒に居てくれる?」


驚いた顔をした銀さんに、追い討ちをかけるように畳み掛ける。


「銀さん居たら何もいらない」


低く唸った銀さんが力強く抱き締めたかと思うと。

「ぐはっ」

変な声をあげた。





「俺には美砂だけだよ」

「美砂は俺のモンだ」

臭い言葉を散々吐かれ、何度も啼かされ、何度も……

とにかく。

今年はしつこいくらいの銀さんと、濃いクリスマスになりました。



20091224

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あきゅろす。
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