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リク&HIT御礼企画
紙一重<絢架様 9500キリリク>【高杉】
総督は一番偉い人。
総督は絶対。

総督は、私の好きな人。



【紙一重】



また子先輩の下、鬼兵隊なるもののノウハウを教えて貰った。

その結果。

「女と見縊られたらダメッス!」

え、そこ?

「でも女の色気も必要ッス!」

え、そうなんですか?


その女の色気で。

総督に可愛がられるようになった



「晋助様」

決まって呼ばれるのは夜も更けた頃。

でも今日は違っていた。

いつものように、就寝の挨拶をしようと部屋の前で呼ぶと。

中からゴソゴソと音がする。

スッと襖が開き、乱れた着流し姿の晋助様が居た。

「なんだ?」
「あの、ご挨拶に来たのですが」
「あァ」

いつもなら、部屋に入れてくれるのに。

襖を後ろ手に閉めた晋助様が私から目を逸らしている。

明らかに、怪しい。

「お休みなさい。晋助様」

ニッコリと微笑むと、晋助様が私を見た。

その隙に襖を開け放つ。


「キャッ」

其処には半裸状態の女が居た。

乱舞している着物、咽るような香水…


「……てめェ、ふざけんなよ」

唸るような声に、晋助様が
「あ?」と聞き返す。

振り返り、晋助様の胸倉を掴んだ。

「堂々と浮気してんじゃねェよ!ボケッ!」


あ。

怒りに任せて本性が出てしまった

部屋に戻る途中に、しでかしたことの大きさに気付く。

総督の胸倉掴んじゃったよ…




部屋に戻り、溜め息を吐いた。

頭を抱えてうな垂れていると。

不躾に襖が開いた。

「ひっ!」

そ、総督が怒ってらっしゃる…

「さっきはよくも啖呵きってくれたなァ」

「そ、それは、晋助様が、」

「浮気したってか?」

くくっと喉を鳴らして笑った。

「何か勘違いしてんじゃあるめェ?」

勘違い?

「おめェと俺の関係」

え?

腕を引かれて唇を重ねられそうになり、反射的に顔を背けた。

が、晋助様の力には敵わず、強引に口付けられる。

「つッ…」

口内に広がる鉄の味。
入ってきた舌を、思わず噛んだ。

「大した女だ」

口角をあげた晋助様の口の端から血が一筋流れていた。

その血をペロリと舐めあげ、晋助様が私の顎を掴む。

「…俺を本気にさせんな」

そう言い放つと、襖を開けたまま出て行った。




今になって体が震える。

雇い主の総督に対しての冒涜。

特別だと勘違いしていた浅はかな自分。

ただの、性的処理の道具。


「好きだったのに」

言葉にすると、急に悲しくなって涙が零れた。





「どうしたんスか!?その顔」

また子先輩が起き抜けの私を見て大袈裟に言う。

鏡を見ると目は腫れ、顔も腫れ…

「ちょっと冷やしてきていいっすか?」

顔を洗い、氷水を作って部屋に戻った。

昨夜は拭っても拭っても涙が止まらず、気付いたら眠っていた。

振られた位でここまで泣くとは、と今までにないことに自分でも驚いた。

でも。それほど好きだったということ。

盛大に溜め息を吐き、服を着替えた。



また子先輩のいる所へ行くと、武市先輩が居た。

「お名前は?さん。
今日はジャージですか」
「はい。スミマセン」

「いいッスよ。セクシー担当は私だけで十分ッスから」

また子先輩…いつからセクシー担当になったんだろう。

いつもはまた子先輩チョイスの短めの服だったけど、今日は地味なジャージで訓練を受けることにした。

もう色気とかどうでもいいし。
こっちの方が動き易いし。

訓練中も、昨日の総督とのことが頭をちらつく。

好きでしたよ。とても。


目の端に入った女物の着物に手が止まる。

晋助様だ。

目を逸らしまた訓練に勤しんだ。





あれからは夜に呼ばれることも夜の挨拶をすることもなくなった。

お食事の時も、平の浪士達ととるようになり、幹部の方々とは別の部屋で。

晋助様が目の前に居るよりは、幾分楽になった。



そんな当たり障りのない生活にも慣れた頃。

時間が空いたから気分転換に船尾へと移動してみた。

海風が気持ちいい。

手摺に凭れ掛かり、海を覗いた。

黒い闇。

吸い込まれそうな位深い緑。


「お名前は?」

その声にビクッと身体を震わせてゆっくりと振り返った。

煙管を持った晋助様が近づいてきている。

気持ちの整理がついていないのに近寄らないで下さい、と私は手摺伝いに移動する。

逃げようとした方の手摺に晋助様の手が置かれ、逆に逃げようとすると、違う手が置かれ…

挟まれてしまった。

目の前の晋助様は口角を上げて私の様子を面白そうに見ている。

「ど、退いてください」

目を逸らして言う私の言葉なんか全く聞いてくれず、耳元に唇を寄せた。

「なァ」

低い声が脳天を直接刺激し、足が震える。

「仲良くやろうぜ」

「嫌っ」

耳朶を口に含まれ、咄嗟に逃げようともがいた。

私の手首を痛いくらい握り、顔を歪める私の目尻を舌で舐める。

「どうした?
泣くようなタマか?」

くくっと喉を鳴らして総督が笑った。

何故ここまでされるのだろう?
何の関係もない私に。

「…なせ」
「なんだ?」

「放せって言ってんだろ!」

緩んだ力に乗じて、力いっぱい腕を払った。

ギッと睨んだ私を見ても全く動じない。

寧ろ、楽しそうに私を見ている。


「なァ、お名前は?」

手摺に凭れ掛かった晋助様が続けた。

「前言った言葉、覚えてるか?」

「前?」



「俺を本気にさせんな」


うっ…

晋助様がより一層低い声で唸る。

怖い怖い!!

手を刀の柄に掛けて私に近づいてきた。

逃げられない。

殺されるのかもしれない。

ぎゅっと目を瞑り、振り上げられる刀を想像していると。



抱き締められていた。



こんなに優しく抱き締められたことがなくて拍子抜けする。

「俺が好きか?」

急に何を言い出すんだこの人は…

意図が分からない。

「俺ァおめェを、」

「や、やめてください!」
「あ?」

「それ以上、言わないで…」

背中に手を回し、零れた涙が晋助様の着物に吸い込まれた。

「俺をてめェ呼ばわりした女は初めてだ」

「はうっ!す、すみませんッ!!」


「……離さねェよ」


コクリと頷くと、「それと」と晋助様が続ける。

「言葉使いは直せ。
おめェには似合わねェ」

「…はい」

それと、とまだ続きそうだったからくすくすと笑う。


「夜は俺の部屋に来い」


返事の代わりに見上げて小首を傾げた。

降りてくる口付けが、優しすぎて恥ずかしくなる。


「……浮気したら殺すぞ」

ボソリと呟く私。

「誰に口利いてんだ?」

「…スミマセン」


私から離れた晋助様が甲板の方へと向かう。

去っていく姿を見ていると、晋助様が振り向いた。

「早く来い」



総督の言葉は絶対。
小走りで近づく私を。
見ている晋助様は、恋人の顔をしていた。





20090929



9500HIT有難うございます★
キリ番申請していただいた絢架様へ捧げます。
「ヒロインが男口調で高杉が浮気。切甘」
やっぱり切ないって難しい……
失礼致しましたヽ(;´Д`)ノ


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