リク&HIT御礼企画
範囲内<キキ様 36000キリリク>【高杉】*
いつからだろう。
貴方が私の元へと立ち寄るようになったのは。
【範囲内】
突然の来訪はいつものこと。
ここ2ヶ月は来てないなぁと秋の夜長に想っていたら。
玄関を叩く音がした。
この叩き方は…
玄関を開けた途端、香の匂いに抱きすくめられて思わず咽返る。
「お香代えた?」
「あ?」
…そうですか。遊郭帰りですか。
「おい」
玄関に晋助を放ってスタスタと部屋に戻る私を後ろから呼び止めた。
「もう来なくていいのに」
思ってもいない言葉が口から発せられる。
2ヶ月も待った挙句に遊郭帰りなんて、私を馬鹿にするのも程がある。
「ご機嫌斜めだな」
煙管を取り出し、口角をあげて私の横に胡坐を掻いた晋助の言葉にまたむっとした。
「前いつ来たか憶えてる?憶えてないよね、晋助は」
「2ヶ月前だろ?あの日は雨降ってたなァ」
…確かに雨は降ってた。
その間何してたの?
そう聞けたら楽なのに、弱みを見せたくなくて聞けないから。
晋助の着物の袖を引っ張り口付けを請うた。
「んっ…」
2ヶ月ぶりの接吻。
より深いものになり、慣れた手付きで着物を脱がす。
手探りで晋助の腰紐を解いた私には、先程の香がきつすぎるくらい香ってきていた。
「この香、臭い」
「そうか?おめェがこの香が好きだって言ってたんだが」
「え」
「末摘花」
言ったっけ?
全然覚えてないんですけど…
「出逢った頃につけていた香だぜ?」
「…そんな前の話、全然覚えてない」
くくっと喉を鳴らして笑った晋助が「酷ェな」と愛撫を再開する。
出逢った頃って2年は経っていると思う。
身体だけの関係が嫌で、「やめたい」と言った私に「好きだ」と言ってくれたのは1年前のこと。
そのことは今でも鮮明に覚えているんだけど…
好き合っている割には、此方からは連絡が取れないし、晋助が来ないと会えない関係。
そろそろ私も見切らなきゃなぁ…
よそ事を考えている私の胸を痛い位握り、痛みで歪める顔を舐められた。
くくっと喉を鳴らして笑う晋助にむっとしながらも、胸の頂を口内に含められてしまうと自然と喘ぎ声しか出てこない。
一糸纏わぬ姿になった私をその隻眼がじっと見、羞恥で顔を朱に染めた私が目を逸らすと愛撫が再開された。
秘部に伸ばされた指が難なく侵入し、水音が響く。
胸の頂を舐め上げながらの愛撫に声も止まらず、爪先がピンと張り詰めてぞわぞわと襲ってくる快感を迎え入れる準備をする。
「晋助…っ!イきそう…」
「イけや」
「でも、」
晋助がナカに入ってからイきたい、とは言えない上、より一層刺激が強くなってきた愛撫に理性も保てそうになく。
「あっあっ!…あーーーっ!!」
1人でイってしまった。
秘部から抜かれた指を口に含んだ晋助を虚ろな目で見ている私。
股を開かれ晋助を宛がわれただけで身体が震えた。
それからのことは、あまり記憶がない。
夢中で晋助にしがみ付き、一度達した身体は敏感になり、ちょっと触れただけでも締め付けてしまっていたらしい。
「くっ!」
呻いた晋助を初めて見た。
それだけは覚えている。
ナカに感じた液体に、私は何故だか心地良さを感じた。
……いや、えと。
厠の個室で暫らく呆然とする。
嬉しいような切ないような悲しいような…
持っている感情をごちゃまぜにしたような感じ。
私が手にしているのは、妊娠検査薬。
あの後もまた来ない晋助に悲しくなりそうになって来ない日数を数えていたら、ツキノモノが来ていないことに気付いた。
そういえば、風邪かと思って体温を測った気がする。
そういえば、薬箱に検査薬があったなと思い出した。
そりゃあ、晋助の子は欲しいと思ったことはあった。
でもそれが許される人ではなくて。
許されるどころか、本人には絶対伝えられない……
でも晋助以外の子を欲しいと思ったこともなくて。
この先どうなるか分からないけど、晋助以上に好きになれる相手は出てこないと思う。
病院で診察をして妊娠確定。
3ヶ月目に入る頃らしい。
私の元に宿った奇跡が消えないように、消されないように…
今度は晋助が来ないことを祈った。
ツワリも何もなく、本当に自分に晋助の子がいるのか心配になる。
そんな時、ふらりと晋助がやってきた。
咽返る香に思わず吐き気をもよおす。
先日と同じお香とは思うが、やはり今の自分の体調には香は合わなかったみたいだ。
洗面所で顔を洗っていると鏡の端に晋助の着物が見えた。
「風邪でもひいたか?」
腕組みをした晋助に悟られてはいけない。
タオルで顔を拭きながら返事をした。
「お名前は?」
晋助に呼ばれ腕を引かれる。
深い口付けをされながら着物を脱がされるが、行為そのものをしたくなくて、慌ててその手を握った。
「あ?」
「今日は、駄目」
「…あァ。構わねーよ」
…生理と思ったのか口端をあげた晋助がお構いなしに着物を剥ぐ。
「いや、ホント無理」
「久しぶりじゃねェか」
釣れないねェ、と開いた襟元から細い指を忍ばせて直接胸を触られた。
ピクリと反応する私を見て笑う晋助。
いつもと同じ行為なのに、気持ちいいとは思わないのは、やっぱり私の身体が変化しているから?
「あのね、」
「…何泣いてんだ?」
「へ?」
晋助に言われて気付いた、目から零れ落ちる涙に。
「泣くほど嫌か?」
嘲笑する晋助に「違う」と首を振る。
言ったらどんなに楽だろう。
来なくていいと思っていたけど、会ってしまうと想いは募る一方で、こんな状態だからずっと傍にいて欲しいとさえ思ってしまう。
でも。
このことは言ってはいけない。
高杉晋助の足を引っ張るような真似はできない。
だから、決めたよ晋助。
「もうやめよっか」
この関係を。
「待つの疲れた」
苦笑する私の頬を伝う涙を拭う晋助が私をじっと見つめる。
「嫌いなわけじゃねェよな?何があった」
「何もないよ。理由がいるの?」
「そういうわけじゃねェが…」
訝しげに隻眼を私に向け、逸らした私は晋助から離れるように台所へと行った。
夕飯を用意し並べる。
晋助は窓辺に凭れて煙管を吹かす。
いつもと同じ。
でも今日が最後。
食べ終わった晋助にお茶を淹れ、私も向かい側で湯呑を両手で挟んでほっと息を吐いた。
「何隠してんだ?」
不意に掛けられた言葉に取り繕う間もなく、顔が歪みそうになった。
その一瞬を見逃してはくれず、晋助がゆっくりと言葉を続けた。
「いいのか?俺と離れて」
嫌だよ。もう会えないのは嫌だけど…
俯くことしかできない私に言葉が続けられた。
「待つのが嫌なら来い。てめェ1人位面倒見てやる」
「……」
その言葉は嬉しいけど、やっぱり迷惑だと思う…
「あァ…1人じゃねェか」
「へ?」
顔を上げた私をいつから見ていたのだろう?
表情1つ変えない晋助が口端をあげた。
「無意識に腹触ってっからバレバレだ」
「え、なに…」
「馬鹿か」
喉を鳴らして笑った晋助が私の前に立つ。
「おめェだけで俺の子が育てられっかよ」
「…ふぇ…っ…」
抱き締めてくれた晋助のぬくもりが嬉しくて、ずっと我慢していたものが、堪えていたものが溢れ出る。
「ごめん…晋助…ごめ、」
頭を撫でられ、耳元で囁かれた。
「守ってやる。ずっと、お前らだけは」
「っ…ありがとう……」
毎日のように愛を囁かれ、寄り添うように寝る。
一緒にいる時間が少なかった分、募る想いが多くて、こんな晋助を見るのが初めてで少し恥ずかしい。
不安で眠れない夜も、いつも傍に居てくれる。
「晋助」
呼ぶと答えてくれる声も。そのぬくもりも。
手が届く範囲に貴方が居るだけで。
20100105
36000HIT有難うございます★
キリ番申請していただいたキキ様へ捧げます。
「高杉で裏有。一般ヒロインが妊娠⇒離れようとする。切甘」
切ないってやっぱり難しい…
ご精読ありがとうございました。
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