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リク&HIT御礼企画
恋ノ始<未紀様 35000キリリク>【土方】
護衛だなんて大袈裟な話。

たまたま父親が幕府の臣下で、たまたま私がストーカー被害にあったっていうだけで。



【恋ノ始】



今日も居る…

カーテンの隙間から見える物体。

なんなんだ一体。


事の発端はたぶん、あの妙な飲み会だったと思う。

臨時で働いている友達の先輩か何だかと数人で飲むからと誘われた飲み会。

暇だった私は猫をかぶって参加をし、その中の1人に見初められ口説かれて、断ったらこうなった。

いやだって趣味じゃないし。

学歴や役所勤めをあからさまに威張る男なんて、趣味以前に嫌でしょう?

それを口に出したら逆上されて、今の状態……


カーテンを開けずに仕事に行く用意をしていると、玄関の新聞受けがカタンと鳴った。

ビク!

あの隙間から見えるようにはなっていないはず。

恐る恐る玄関を見遣ると、白い封筒が挟まっていた。


気持ち悪いから手袋をして封を開けると、中からは数枚の写真。

「ひっ!!」

仕事中の私、お弁当を食べている私、スーパーで買い物をしている私……

思わずその写真を放り、母親に電話をかけた。





「護衛して貰うことになったよ」

「は?」

会社帰りに実家に寄るように言われた私が父親の言葉を聞き返す。

「警察に相談してみたら真選組に護衛を頼めることになってね」

「真選組ってあのチンピラ警察!?」

「こらこら。江戸の平和を守ってくれてるんだよ?そこの局長とは呑み仲間で…」

見廻りをしている真選組はたまに見たことがあったけど、明らかに柄が悪く。

「早速だけど今日から来てもらうから」

「え、ちょっと!」

呼び鈴の音に私の訴えは掻き消された。

「お父さん説得するの大変だったんだから。お名前は?の独り暮らしやめさせろーって言ってたのよ」

席を立った父親を見送って、母親がコッソリと打ち明ける。

「護衛つけたらまだ続けていいっていうから」

「ありがとう!」

独り暮らしがしたくて家を出たのに、こんなことで帰るわけにはいかない。


「お名前は?、護衛してくれる真選組副長の土方くんだよ」

其処には瞳孔の開いた黒髪の男が立っていた。




「えと、土方さん、護衛ってそんなに近くでするんですか?」

「あ?」

真選組の制服の人が横に並んでいる。

それだけで目立つんですけど!!

ストーカーどころか友達も寄ってこないよ…

「手っ取り早いだろ、この方が」

「手っ取り早いって…」

確かに、土方さんが護衛について3日が経ったけど、周りを見渡してもあの男の姿は全くと言っていいほど見えなかった。

でもあの写真が送られてきてからは、何処から見られているかわからないという恐怖感でキョロキョロしてしまう。

「俺もそんなに暇じゃねェんだよ」

「…スミマセン。わざわざ副長さんが護衛だなんて、」

恐縮した私がボソボソと呟くと、土方さんは舌打ちをした。

「そういう意味じゃねェ。俺はこういう回りくどい奴が大嫌いなんだ」

「そうですよね!私もそうです」

拳を作って土方さんを見ると、口端をあげて笑われた。

「早く捕まえてやっからな」

安心しろ、と頭をポンと軽く小突かれる。

ちょっ、ちょっと…

なんだかときめいちゃいましたよ、私……

よく見ればっていうか、よく見なくても土方さんカッコイイし背も高いし、カッコイイし。

言葉は乱暴だけど優しい言葉もくれるし。

そっと見上げると、土方さんは銜え煙草で周りを見渡していた。



護衛から2週間が経ち、朝も見回ってくれているらしく、カーテンの隙間からあの男は見えなくなっていた。

しかし、仕事から帰った私が目にした白い封筒。

上司に叱られている私、同僚とお茶している私……

あれほど護衛がついているのに、見張られているかのような写真たち。

今日に限って護衛はついておらず。

その時、電話が鳴った。

非通知設定に怖くて出れなかった。

そして呼び鈴の音。

怖くて寝室へ移動し、布団を被って耳を塞ぐ。

ドンドンとドアを叩く音がする。

「もうやだ……」

持っていた携帯が震え、表示された名前に通話ボタンを押した。

「土方さんっ」

「どうした?何かあったか?」

私の声音で何があったかを瞬時に判断した土方さんが「すぐ行く」と告げて切った。

それだけで、心なしか恐怖は薄れたが、ガチャガチャとドアノブを回す音に身の毛がよだつ。

早く来て……



ドンッ!!

布団を被っていた私の耳にも届いた鈍い音。

「総悟!そっち行ったぞ!」

「まかせなせェ」

ドンッ

…破壊音?

土方さんの声が聞こえたから、チェーンを外して鍵を開けてみる。

私の目に入ったもの…

あの男がボロボロになっててボコボコにされてて。

バズーカを抱えた男の子が馬乗りになって手錠をかけていた。

土方さんは……


「お名前は?、もう大丈夫だ」


振り向いて私の方に近付いてくる。

「ありがとう、ございました…っ…」

怖くて気が張っていた私の身体は正直で、捕まったのを見た途端、涙腺は緩み膝から崩れ落ちそうになった。

慌てた土方さんが私を受け止め、「スミマセン」と言った私の頭を撫でる。

「護衛はもう終わりだが」

頬を伝う涙を拭いながら見上げた私に。


「今度メシでも行くか?」


断る理由なんてなくて。

速攻で返事をした私を笑う土方さん。

「土方さんー先行っときますぜィ」

ニヤニヤした男の子に舌打ちをし、土方さんは私から離れた。

「連絡待ってますね」

私の言葉に口角を上げた土方さんが何とも言えない位かっこよくて。


自分の気持ちに気付いてしまいました。



20091226



35000HIT有難うございます★
キリ番申請していただいた未紀様へ捧げます。
「真選組(土方さん)に護衛してもらう設定。まだ恋人じゃない」
恋人設定じゃない話、書いてて楽しかったです!
ご精読ありがとうございました。


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