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リク&HIT御礼企画
浮疑惑<夜梨様 32000キリリク>【土方】
寒くなると人恋しくなる。
でも貴方はいつも仕事仕事で。
電話の1つもくれないんだから。



【浮疑惑】



「銀ちゃんー、私もう呑めないよー…」

1軒目の居酒屋から2軒目に向かう途中、ふら付いた私を支える銀ちゃん。

「はれ?」

「お名前は?危ねェ」

ふらついた足が車道向かっていたらしい。

「何でそんなに呑んでんの…」

呆れたように呟く銀ちゃんに私は頬を膨らます。

「今日の銀ちゃんおかしい!前はもっと呑んでたでしょ!?」

「おまえが先に潰れそうだから押さえてんだよコノヤロー」

「遠慮すんなよコノヤロー」

背中をバンバンと叩くと、銀ちゃんが苦笑をして歩き始めた。

私の腕は銀ちゃんに掴まれて固定されている。

「いいよヒトリで歩けるよ」

「そっか?」

腕を離した銀ちゃんと並んで歩くも、私の足は言うことを効かなくてフラフラしていた。

「あー…ここ掴まっていい?」

口端を上げた銀ちゃんの左腕に掴まり、家路を歩く。

「ババァんとこ行くか?」

「うん。お登勢さんとこ久しぶり」


銀ちゃんとは妙ちゃん主催のコンパで知り合ったお友達。

私の友達を気に入った銀ちゃんに相談されているうちに意気投合し、呑み仲間になったのだ。


「あ、多串くん」

「多串くん?」
誰、お友達?と銀ちゃんが見ている方向を見ると、、、

「ひ、土方さんっ!?」

愛しの恋人、土方さんが銜え煙草で眉間に皺を寄せて歩いていた。

思わず銀ちゃんの背中に隠れる。

「お名前は?何してんの?」

「いや、なんでもない、」


「おいこら何隠れてんだ」

ガシッと腕を掴まれ思わず「ひっ」と叫んだ。

「ちょっとちょっと、真選組は一般市民を怖がらせるんですかー」

「あ?おめェこそなんで此処に居る?」

私を挟んで銀ちゃんと土方さんが睨みあっていて、酔いも醒めるような空気に首を竦める。

「俺はお名前は?と呑んでんだよ」
しっしっと銀ちゃんが土方さんを手で追い払い、私の腕を引っ張った。

「待てコラ」

片方の腕を掴んだままの土方さんに引っ張られる。

「早く帰って寝ろ」

瞳孔の開いた土方さんに睨まれると頷くしかなくて。

それを見た銀ちゃんが私の頭を撫でた。

「あーあ、女の子怖がらせて最低ー」

「さっきからうるせェな。こいつは俺の女だ」

「は?」

こいつは俺の女だ……

頭の中でリピートされている。
嬉しい。

「土方さん、」

「俺がいねェ時に何してんだ」

腕を引き寄せられ抱きつこうとした私のオデコにデコピンをかました。

「痛ッ」

「万事屋と浮気か?堂々としたもんだな」

はい?

「腕組んで何処行くんだよ」

大量に煙草の煙を吐き掛けられて咽る私を蔑んだ目で見ている。

「ごめんなさい…」

不条理だと思いながらも私は謝ると、土方さんの口角があがった。

「赤くなってっぞ」

額を撫でられ、へへ、と笑った私の腕を銀ちゃんが引っ張る。

「お名前は?行かねェの?」

「行かねーよ」

私が答えるより先に土方さんが返事をし、銀ちゃんが鼻を穿りながら言葉を続けた。

「てめェには聞いてないんですけど。何?こいつの男ってだけで口出して来んの?」

「何だと!?」

「てめェがお名前は?放ってっからだろ」

かわいそうなお名前は?、と銀ちゃんが私を抱き締めようとするのを土方さんが腕を引いて阻止した。

他人事のように見てしまっていたけど、この2人が喧嘩…というか銀ちゃんが土方さんを煽っているだけな気がするが…してるのは私が原因らしくて。

大の大人が道端で取っ組み合いの喧嘩をしそうになっているのが面白くて。

「やめなよー」

ニヤニヤしてしまった。

土方さんに腕を掴まれ、銀ちゃんにも腕を掴まれ、いい男が2人して取り合ってる感じにニヤニヤが止まらない。

「…お名前は?気持ち悪い」

土方さんが変なものでも見る目つきで私を一瞥し、腕を離した。

「とにかく!おめェは帰って寝ろよ」

「えー、今からお登勢さんとこ行くんですよ」

「彼氏の言うことが聞けないのか」

ぐりぐりとこめかみを両手で攻撃され、痛みで蹲る。

「彼氏はこんなことしないー……」

「ひでーな…」

銀ちゃんからも同情の声がした。


「…万事屋、先行っとけ」

「お名前は?は、」

「後で連れてく」

へいへい、と銀ちゃんが不安そうな私を見てニヤリと笑って先にお登勢さんのところへ行く。


銜え煙草の土方さんが、蹲ったまま涙目で見上げている私を見下ろした。

「おら、立て」

腕を持ち上げ立ち上がった私を、優しく抱き留める。

あぁ、久しぶりの土方さんの匂い

ぎゅうっと背中に手を回してしがみ付いた私に苦笑した土方さんが、言葉を紡いだ。

「他の男と呑みに出るとはどういう了見だ?」

「えと、銀ちゃんは呑み仲間で、」

「そういうことを聞いてんじゃねェ」

煙草を灰皿に押し付けながら、土方さんが冷たい目で私を見るので睨んでしまった。

「あ?」

「…土方さんが電話もメールもくれないから」

「あん?俺?」

「だから、」

「浮気すんのか」

「違うーー!!」

いきなり大声を上げたもんだから土方さんが驚いた顔をする。

「もういい!」

土方さんの腕から抜け出し、掴まれた腕を振り払った。

「お名前は?待て」

「見廻りの途中なんでしょ!仕事したら?副長さん」

プイ、と顔を背けて銀ちゃんの待つお登勢さんのところへ急いだ。





「うえーーーーん!!」

「ちょっ、今時うえーんって泣く子いる?」

隣の銀ちゃんが苦笑しながらお酒を煽って泣いている私を宥める。

「土方さんの馬鹿ーー!!だれがこんな天パ野郎と浮気するかーー!!」

「うわっ!なんか酷くない?俺とばっちりだよね?」

泣き真似をする銀ちゃんを一瞥してまた泣いた。





気付いたら家に居て。

痛む頭を押さえて起き上がると、テーブルで新聞を読んでいる銜え煙草の黒髪が居た。

「土方さん!?」

え、なんで?

痛む頭を抱えて昨夜のことを思い出すけど、お登勢さんのところで呑んだ後の記憶が全くない。

「起きたか」

土方さんの低い声がした。

「土方さん…」

「その様子じゃ憶えてねーか」

苦笑した土方さんが私の傍によって頭を撫でる。

「何か、しました?」

恐る恐る聞くと目を逸らして続けられた。

「…あの後万事屋から連絡着た」

「銀ちゃん?」

「お名前は?が迷惑かけてっから迎えに来いだと」

「あ…」

そういや、銀ちゃんに絡んだような…

「仕事終わって行ってみりゃあ、おめェ寝てるし」

「ここまで運んでくれたんですか!?」

頷く土方さんに申し訳なくてうな垂れる。

「ご迷惑をおかけしました…」

また怒られるかと思ったら、ふっと土方さんが笑みを零した。

「今日は非番だ。久しぶりに何処か行くか?」

「え、でも土方さん寝てないんじゃ、」

「1日くらいどうってことねェよ」

煙草を灰皿に押し付けた土方さんがニヤリと私を見て笑う。

なんでこんなに上機嫌なんだ?

昨夜は不機嫌丸出しだったのに。

「何か、ありました…?」

「何も。ただ、」

嬉しそうに話す土方さんの言葉に私は羞恥でゆでだこの様に顔を真っ赤に染めた。


"俺が好きで好きでしょうがねェんだな"


そう言われたら繕いようもなく。

記憶にないってことはうわ言か寝言だったというわけで。

恥ずかしくて布団を被るとそのまま土方さんに抱き締められた。

「俺もちゃんと、」



土方さんの言葉とぬくもりに身を委ねる。
恥ずかしかったけど嬉しい気持ちが強すぎて。
変な疑惑を掛けられたけど許してあげよう。



20091222



32000HIT有難うございます★
キリ番申請していただいた夜梨様へ捧げます。
「土方さんで、銀ちゃんと飲んだ帰りに見回り中の土方に見つかって焦る」
えと…オチがこんなので申し訳ないです(汗)
ご精読ありがとうございました。


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