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リク&HIT御礼企画
囚われ<かな様 31000キリリク>【土方】
此処は何処だろう?

頭が割れるように痛い。

助けて…



【囚われ】



鈍器のようなもので殴られ。

意識が戻った時には窓辺に佇む紫の着物の男。

「お目覚めか?」

顔を此方に向けなくても布擦れの音で気付いたのだろう。

後ろ手に両手を縛られ、起き上がろうとした私に襲い掛かる鈍痛。

「…鬼の副長の女」

喉を鳴らして笑いながら、振り返る隻眼の男…

指名手配犯 高杉晋助…


鬼兵隊に捕まってしまった。
このままでは土方さんに迷惑がかかるのは分かりきっている。

「殺すなら早く殺しなさいよ!!」

私の叫びにも顔色1つ変えず、高杉は近付いてきた。

這うように後退り、壁に追いやられた私の櫛を抜き取った。

パラリと無造作に解かれた髪を高杉が掬う。

「そう簡単には殺しはしめーよ」

「え、」

「あいつが来たら仲良く殺してやらァ」

顎を掴まれ噛み付くように唇が重ねられた。

抗う私が歯を立てると、口端を上げて笑う。

「暫らく此処に居ろ」


襖が閉められ、高杉は出て行った。

静寂に身が震える。

できることなら来ないで欲しい。





そんな思いも虚しく、響き渡る轟音に目を閉じた。

「真選組だッ!!」

ドタドタと階段を駆け上る音。呻き声。

無駄な血が流れているのだろう。

私が捕まったりしたもんだから…

「お名前は?!!!」

襖の開く音に愛しい人の声。

目を開けると土方さんのぬくもりに包まれていた。

「土方、さん…」

なんで来たの?
なんで…

「何もされてねェか?」

「…はい」

縄を解かれ支えられて立ち上がる。

襖の向こうには、高杉が居た。



「王子様のお出ましか?」

くくっと喉を鳴らした高杉が抜刀している真選組に怯むことなく私に近付く。

私の前に立ちはだかる土方さんに向けられた刀。

「そんなに大事か、その女が」

刀を構えたままの土方さんが低い声で答える。

「おめェにはわかんねェだろ」

「確かに。護るモンなんざ必要ねェ」

振り上げられた刀が音をたてて交わされる。

抜刀した真選組隊士が束になってかかっても、全て高杉は薙ぎ倒し、息さえも乱れない。

敵ながら、凄い男だ。

「高杉ーーーッ!!」

襖の向こうにはバズーカを構えた沖田さん。

ドンッ

ちょっ!私ら此処いるよ!?

「総悟ーーーーッ!!テメェ、」

「ちっ!高杉が消えやした」

目の前に居た高杉が煙に紛れて消えてしまっていた。

私の櫛と共に…





「何捕まってんだ馬鹿!!」

「…すみません」

私だって、捕まりたくて捕まったわけじゃないのに!!

現場検証をしている真選組に遠巻きに見られながら、土方さんに怒られている。

「殺されてねェのがおかしい位ェだぞ!」

「わかってます…」

分かってますよ私の不注意ってこと位。

私は一般市民なんです。それを守るのが真選組でしょ?

指名手配犯を町中にのさばらせているからこんなことになるんですよ。

と思っても言えず。


「でもまァ、無事でよかった」


ポン、と頭を撫でた土方さんの顔がほっとしたように崩れた。

「うっ…」

堪えていたものが堰を切ったように溢れ出し、人目も気にせず土方さんにしがみ付く。

「怖かった…」

「あァ。よく頑張ったな」

宥めるように背中を撫でられ、それもまた優しくておいおい泣いた。






あれから数日しか経たないうちに、私の働いている和菓子屋さんに、笠を被った男が入ってきた。

紫の着物…

「よォ」

笠をあげ、隻眼の男が口端をあげて笑っている。

「っ…!何の用ですか?」

今度は捕まらないように、ショーケースを挟んで後退った。

「今日は客だ」

「へ」

「干菓子と栗饅頭を貰おうか」

きょとんとしている私を隻眼が睨み、慌てて包装をする。

お金を受け取る時に腕を握られた。

しまった!

怯えた顔で高杉を見たからか、口角があがり隻眼が光る。

「そういう顔できんじゃねェか」

「な、何ですか!」

キッと睨むと喉を鳴らして笑われた。

「また来る」

懐から櫛を出して、私の手に乗せる。

「せいぜい俺に捕まんねェようにな」

口端をあげた高杉が、店を出て行く。

「…二度と来るなーー!!」

私の叫びも虚しく、高杉は消えた。





このことは後で土方さんに報告した。

そしてまた怒られた。

「だって来たんだよ!しょうがないでしょ!!」

今回は怒られる意味が分からない。

「また捕まったらどうすんだ!?」

苛々しながら土方さんはポケットから取り出した煙草に火を点けた。

「…じゃあ土方さんがずっと守ってよ」

溜め息混じりに呟いた私に。


「いいぜ。一生守ってやらァ」


煙を吐きながら私を見据える。

一生じゃなくて今守って欲しいんですけど。

「どうしたらいいんですか、私」

口を尖らせて言う私から目を逸らした土方さんがボソボソ呟いた。

「え?何?聞こえないんですけど」

近付く私に舌打ちをして。

「俺がずっと傍に居てやる」

「そうして貰えると心強いです」

ありがとうございます、とお礼を言ってお茶を淹れに立ち上がった。

「お名前は?」

「はい?」

「あのよ、その、」

「なんですか?」

煮え切らない土方さんに怪訝な顔をした私を見て溜め息を吐かれた。

「……なんでもねェ」

変な土方さんだ、と私は首を傾げて台所に行く。


その後を追ってきた土方さんに腕を引かれた。

「土方さん?」

「おめェ本当に意味わかんねェのか?」

「なにが?」

「……もういい」

溜め息と共に肩を落とした土方さんを仰ぎ見て微笑んだ私は。


「一生守ってくれるんでしょう?
私も一生傍に居ますから」


より一層瞳孔の開いた目に、してやったり顔で口端をあげた。




20091218



31000HIT有難うございます★
キリ番申請していただいたかな様へ捧げます。
「土方さんで、鬼兵隊・高杉に拉致られたヒロインを助ける副長」
高杉さんがおちおち人質を放すはずがないと思いつつ、副長メインにしたら、オチがなくなりました…スミマセン……
ご精読ありがとうございました。


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