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BL短編小説
7
 よく寝たお陰か、熱も大分下がっているみたいで体も割りとすっきりしている。
「もう少ししたら来なさいね」
 母さんは最後にそう言って部屋を出て行った。


 翌日の夕方、熱もすっかり下がったもののあらぬ所が痛んだ俺は、行儀悪くベッドの上に寝転がったままで問題集を広げていた。
「よお」
 廊下で足音がしたと思ったら、ノックに続いてドアが開き、洋一が顔を覗かせた。
 来てくれた事が嬉しくて笑ったつもりだったけど、洋一の顔は少し曇ってしまう。あれ? ちゃんと笑えていなかったかな?
「もしかして……ケツ、痛ぇのか?」
 ベッドの側まで来て膝をついて心配そうに俺の背中にソッと手を置いた。
「う……恥ずかしい事聞かないで……」
 恥ずかしさの余り、問題集を放り出してシーツに顔を埋めてしまう。
「ああ、ほら、顔隠すなって」
 頬に手を添えられてクイッと顔を上げられた。視界に真剣な面持ちの洋一が映る。
「悪いの俺だろ? ゴメンな。次からは気を付ける」
「え? 次……」
 更に顔が赤くなるのがわかったけれど、俯く事すら許されない。
「やっぱ大地可愛いよなぁ。下向くな。俺にそやって色んな顔見せてろ」
 洋一が困ったような笑ったような、微妙な顔をした。俺の好きなニカッとした全開の笑顔じゃない。
「ん? なんか不満か? 言ってみろ?」
 俺の僅かな不服を感じ取ったのか、洋一が顔を近付けてくる。
「……俺は……洋一の笑った顔が……見たい……」
 なんとか言葉にすると、頬に添えられた洋一の指にクッと力が加わった。
「そか」
 小さな呟きが聞こえたかと思ったら、洋一の唇が重ねられていた。
 軽く触れて、ソッと唇が舐められる。
 驚き少しと恍惚少しの頭で洋一を見詰めると、あの全開の笑顔があった。
 嬉しい。凄く嬉しい。けれど今度は洋一が顔を背けてしまう。
「やべぇ、やべぇ……わり、今日んとこは、もう帰るわ」
 洋一はそそくさとベッドの側を離れて、ドアまで行って振り返る。
「また来る。二学期からも、下向かずにそやってちゃんと俺を見ろよ」
 再びニカッと全開の笑顔を見せてくれたから、俺もしっかり笑えた。


 もう、きっと大丈夫。洋一が笑顔を見せてくれるなら、俺もちゃんと洋一を見詰めていられる。


   END.

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