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BL短編小説
9※R18
 はっはっはっ、と荒い息を吐くままの武志は石井を見上げた。絡み付くような熱い視線を向けているものの、その手は武志の返事を待たずに、既にコンドームのパッケージを開けて準備に取り掛かっている。
 声を出す事すらままならず、武志はひとつ頷いて石井の肩に片手を伸ばした。
「武志、大好きだ……」
 武志の耳元に囁きながら、片足を抱える。十分に解された後孔に更にローションを足し、自らの熱を宛てがった。
 ずっ、と先端を沈み込ませると武志の眉間に再び力が入る。
「武志……武志……」
 名前を呼んで頬を撫でながら、ゆっくり着実に熱を沈めていく。
 半分程で、石井は一旦止めた。
「武志、息止めないで」
 唇を撫でて促すと、伏せられていた瞼が涙を纏って持ち上げられた。
「け、い、す……け……」
「う、あ……くぅ」
 やっと声を発した武志の扇情的な様子に、思わず熱を破裂させてしまいそうになり、石井は呻いた。
 はー、はー、と荒い息を吐く石井に合わせて武志も呼吸を繰り返した。
「圭祐……もっと名前呼んでくれ……」
 うっすらと微笑んだ武志に背を押されるようにして石井は腰を進めた。

「武志……武志、武志…………全部、入ったよ。大丈夫か?」
「ん……大丈夫……」
 武志は目尻に涙を浮かべながらもほわりと笑った。
 石井が視線を下ろすと、すっかり力を失ってしまった武志の雄が目に入った。
 指を絡めて扱き上げると、石井を包んでいる秘肉がびくびくと複雑に蠢いた。
「あ、はぁっ……」
「た、武志っ、くっ、や、ヤバいっ、止まらないっ……」
 とうとう堪えきれなくなった石井が、ガツガツと腰を打ち付けだした。
「武志っ、武志っ……ごめんっ……」
 程無く、武志の最奥に打ち付けた石井の腰が大きく震えた。
「くぅ、あ、あぁ……」
 大きく息を吐くと、漸く武志の状況が石井の頭に染み込んで来た。
 はっ、はっ、はっと浅く早い呼吸を繰り返し、石井の手に包まれた屹立は濡れそぼっているものの一度も達してはいなかった。
「武志! ご、ごめん! 俺ばっかり……」
 慌て自身を引き抜く石井に、武志はまたほわりと笑う。
「圭祐……ヨかったか?」
 石井は堪らず、きつく武志を抱き締めた。
「良かった。んっ、凄く、良かった。……良過ぎて体が止まらなかった……」
 途中で何度かキスを落としながら、武志の体を抱き締め、撫で回す。
 そして自身の後始末もしないまま、脱力している武志の股間に顔を埋めた。
 武志の背筋に衝撃が走る。
「あぁっ! やあっ! けいす……そんな、ダメ……あぁぁあーー!」
 熱く滑った石井の舌できつく吸い上げられ、武志は声を上げて熱を解放した。
「お、まえ、いきなり、なんて事すんだよ……」
 荒い息の中、寝転がったままの武志が抗議すると、石井は自身の後始末をしながらまるで行為に似つかわしくない爽やかな笑みを浮かべた。
「俺だけ気持ち良かった、なんて事は嫌だからね…………それで、武志は気持ち良かった?」
 武志を腕の中に閉じ込めて頬ずりしながら尋ねると、照れた武志が手近に有ったコンドームの箱でパコンと軽く頭を叩いた。
「わーかんね。俺初めてだもんよ。半分くらいは訳わかんなかった……でも……あれが『気持ち良い』なんかなぁ……」
 先程体を貫いた衝撃を思い出しつつ、そのままコンドームの箱を振りながら呟く。ふと、その箱の裏面を見て、蓋を開けた。
 今日が初めての使用ではないようだ。パッと見で数が合わないのだ。
「え? どうした、武志? まさかもう一度、とか言わないよな?」
「……圭祐、経験有るんだ……」
「え? いや、武志、あの……」
 好きな相手と抱き合えた満足感や喜び等で充たされた胸に、小さな穴が開いた感じがした。そこから砂がこぼれ落ちるようにして、胸が萎んでいく。
 体を起こした石井はアワアワと慌てふためいて、言い訳を探しているようだ。
「だよなぁ……今どき、高校卒業しても童貞なんて、レア物かもな……」
 武志は自嘲したのだが、石井が思わぬ言葉を吐いた。
「ええと、あの……俺も……レア物、だ。あの、武志、誤解していないか? 俺、武志が初めての相手なんだけど……」
「ええっ!? 嘘だろ? だって、お前、ヤケに慣れてて…………つか、ゴムが新品じゃねぇのはどんな理由だ? っつの」
 武志が吠えると、石井は視線を泳がせながら白状した。
「えっと……ひ、一人でスル時に……あの、何度も武志を抱いている想像して……そ、その、コンドームやローションも抱いた気になって、使ってみたりシマシタ……」
 おどおどと武志の反応を窺っている。武志はぽかんと口を開けて数秒呆けたが、大きな瞳をくるりと回して瞼を閉じた。
「あ、あの、武志? ……怒った? 軽蔑した?」
 石井が恐る恐る尋ねると、ぱちりと目を開けた武志がちょいちょい、と指で招いた。
 招かれるまま顔を寄せると、武志がその首に両腕を回してきて、石井は引き寄せられた。
「たけ、んぅ」
 躊躇い無く唇を合わせ、武志はぎこちなく石井の口内で舌を蠢かせた。
「ちょっと変な味すんな……あー……まぁ、なんだ。そのお陰で俺達初めて同士の割りに、すんなりいった方じゃね?」
 武志は拍子抜けする程あっさりと事実を受け入れた。
「え? ……言いたい事はそれだけ?」
 呆気に取られる石井に、武志はほわりと笑みを向ける。
「そんな事より、俺は『圭祐と』こうなれた事の方が大事だ」
「俺と……」
 石井がぼんやりと武志の言葉を反芻しながら、喜びをじわじわ感じているうちに、言葉を放った当の本人はとろとろ瞼を閉じ始めた。
「ちょっと……なんか、眠ぃ。四時に起こしてく、れ……」
 早くも深い寝息をたて始めた武志の横で、石井は長い溜め息を吐いてシーツに突っ伏した。
「前立腺を刺激出来た気がしない……精進が必要だ、俺」
 暫くぐりぐりとシーツに頭を擦り付けていたが、なんとか気持ちに折り合いを付け、武志にタオルケットを掛けてやる。四時の十分前にアラームをセットし、自らもタオルケットに潜り込んで武志を軽く抱き寄せて眠りに就いた。


「ピピピピ……」
 アラーム音で目が覚めた。短い時間だったが、目覚めはすっきりしている。腕の中の武志は未だあどけない寝顔を晒していた。
「武志、武志。もうすぐ四時だよ」
 肩を揺すって声を掛けると、武志はぽあっと目と口を開けた。
「ヤバっ……可愛い」
 武志の様子に目を奪われかけた石井は慌て枕に顔を埋めた。
 そんな石井をぼんやり眺めながら身を起こした武志が頭を軽く掻いた。
「わり。シャワー貸して」
「どうぞ使ってクダサイ」
 石井は枕に顔を埋めたままもごもごと返事をして、やはりもそもそと体を縮めてベッドを降りる武志に道を空けた。
 ベッドに腰を掛けた状態から立ち上がろうとした瞬間――
「わっ!」
 武志は膝から崩れてしまった。
 まるで糸の切れた操り人形のように、ガクガクと足が言う事を聞かない。
「あれ? れ?」
「武志! 大丈夫か?」


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あきゅろす。
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