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どうしてこうなった
不仲な関係
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「ねぇ、起きなよー。カス」

「………う、ぁー?」

「寝ぼけないでよ、カス。寝顔がキモいっつーの」

「っ!?」



俺は腹部に突然走った痛みに、意識が覚醒するのを感じると慌ててソファから体を起こした。

一体なんだ。


「へ?……あれ?キミは…?」

「うわぁ、見れば見るほどアンタって中の下ー」


何だかかなり酷い事を言われているようだが、寝起きの頭では上手く相手の言葉を処理できない。


とりあえず今わかるの事はただ一つ。

今俺の目の前に居る上半身裸の美少年は、俺が眠りにつく前アイツと激しくセックスをしていた男の子だと言う事だ。

その裸の上半身には見事に先程まで二人が愛し合っていたんだなぁという証が、大量に白い肌を彩っている。

すげぇな、マジで。


……あーっと。
そして、またたった今、その美少年に関してもうひとつわかった事がある。
……先程からジワジワとした痛みを伴う腹部は、この美少年が俺の腹に足を乗せているから、と言う事だ。

しかも、なんかちょっとずつ足にかかってくる力が増えてきている気がするし。

あー、たたた。

ガチで痛い。


「あ、のー。お腹が凄く痛いので、足を下ろしてくれませんか」

「やだね」


やだねって……。

ちょっ、こんな綺麗な御足に踏みつぶされる日が来るなんて思ってもみなかったんだけど。

痛いよー

最後には身が出るぞ、コラ。


「あの、マジで痛いんで……お願いします」

「じゃあ、一つだけ条件がある」

「……何でしょう」

「あんたさ、邪魔だからこの家から出て行ってくれない?」


……え。


「いや、あの。この家俺の家なんですけど」


俺は戸惑う頭を必死で動かし、やっとのことでそう口にした。

すると、俺の腹に乗っていた足が更に力を増した。

俺……圧死するかも。


「あんたさぁ、俺と明彦があんなに愛し合ってんの見てまだ、居残ろうっての?みじめだとか思わないわけ?」

明彦……そう美少年の口からでた、アイツの……俺の幼馴染兼恋人の名前に俺はチラリと寝室の方を見る。

やっぱり、誰とやってもあいつは半日はぐっすり寝てしまうんだな。

ほんと。俺なんか寝てるとこ無理やり起こされて足蹴にされてるのに良い御身分だよ。


「明彦なら疲れて寝てるよ。だって夜はあんなに激しくやっちゃったから。無理もないよね」


そう、うっとりしながら寝室の方へ目をやる美少年は、やはりまごうことなき美少年だった。

ちょっと、これ絶対は外国の血がどっかで混じってる。

これで俺の腹の上に足を乗せてなかったら絵的に完璧だったのにな。

いや、この図もマニアにはたまらない図かもしれないが。


俺がいつの間にか名も知らぬ美少年を見上げていると、それに気付いた美少年が明からさまに嫌そうな顔で俺を見下ろしてきた。


「キモイから見ないでくれる」

「……すみません」

辛らつ過ぎて心折れそうなんだけど、俺。


「つーかさぁ、さっき俺が言った事聞いてた?あんた俺達の邪魔だからとっとと荷物まとめて出てってくんない?」


「……いや、だってこのアパート1年契約だから今出て行くと違約金が……」

「はぁ?なに言ってんの?あんただけ出て行けば問題ないじゃん?ここは俺と明彦の家なの。邪魔だから出てけよ」


………あれ、何かいつの間にかこの家の所有権が俺じゃない人に移っているんですが、どうしたらいいですかね。

つか、出て行けって……いくら美少年に頼まれても、明彦に笑顔で頼まれても無理だし。


だって学校通えなくな……


っていうか、今何時だ?


「……あぁぁぁぁぁ!!!!」

「うわっ、なに!?」


俺は脇に置いてある時計へ目をやると、勢いよく飛び上がった。

その衝撃で、俺の上に足を置いていた美少年が後ろへ倒れ込む。


「あぁ、ごめん!でも俺今日ちょっとゼミの発表があって、準備もあるからもう行くわ!」

「はぁ?ちょっ、まだ話は終わってない!」


美少年が何か叫んでいるがこっちはそれどころではない。

だって時間がないんだ、仕方ない!

準備は……

よし。
幸い昨日風呂にも入らず寝たから、格好は普段着のままだ。

このまま行こう。
……汚ないとか言うな。

仕方ないんだ、時間がない。

俺は部屋の中から必要なものをひっつかむと、急いで玄関へ足を向けようとした。

が、一つ気になっている事があったので、ちょっと立ち止まって尻もちをつく美少年に向かって口を開いた。


「あ、キミ。明彦が起きたら冷蔵庫の中のカレーを温めて二人で食べておいてくれ。あとは………キミ、上来た方がいいよ。風邪ひくって。ぜったい。じゃ、俺はもう行くね!」


あー、ヤバい。ヤバい。


まだ下書きすら終わってないし。
教授に頼んで発表の順番変えてもらおうかな……



俺は入口に置いてある鞄をひっつかむと、そのまま急いで家をでた。


やはり、後ろで何か叫び声が聞こえていたが……もう何を言っていたか全然聞こえなかった。


これが、俺と美少年、幹夫(みきお)ことミキとの最初の出会いだった。







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