どうしてこうなった
去りゆく関係
うあ、やべ……
そう思いながら、俺は荒い息を整え、開いたドアを見ると、そこには片手に薬を持ち、驚いた顔でこちらを凝視する幹夫の姿がった。
「はぁ、はぁ……み、きお…」
俺は途切れ途切れに幹夫の名前を呼びながら、現れた幹夫の顔を見ると、幹夫の視線が全て俺に集中しているのがわかった。
……幹夫の視線は全て俺の……そう、体へ注がれる。
明彦は………アイツは一番マシな事に……きちんと服を着ている。
アイツは我慢がきかず、局部だけの露出にとどまっているから幹夫には服を着ている姿しか見えない。
しかし、だ。
俺は背面座位で入口を向かされていた挙句、しかも何も衣服は身につけていないのだ。
畜生な事に、全部明彦に脱がされてしまった。
故に俺は、全て余すところなく目の前の幹夫に見られている、と言う事だ。
あぁ、何だ。この羞恥プレイは……もう、最悪だ。
俺が肩で息をしながらぼんやりと幹夫を見ていると、幹夫もずっと俺を凝視したまま動かなかった。
こんな恰好をしている俺が悪いのだが……あまり、そう見ないでほしい。
美形に突かれ、美少年に見られている素っ裸の俺、平凡男の俺は、その時、本気で死にたい気分に駆られた。
「……アッキー」
死にたい死にたい
マジ召されたい……!
俺がそんな思いに支配されていると不意に幹夫が俺の名前を読んだ。
「ぁ……みき、お……」
しかし、俯いていた俺が幹夫を見上げた時、そこには茫然とした表情の幹夫は居なかった。
ただ、
ただ、そこには真っ赤な顔で俺を睨みつけ、怒りを露わにしている幹夫の姿があるのみだった。
「出てけ!」
「っ!み、きお……っ」
「出てけよ!お前なんか嫌いだ!アッキーなんか……出てけ!気持ち悪いんだよ!?」
「っ!」
そんなに叫ぶな、また熱が上がるぞ。
そう言いたかったが、その言葉が俺の口から放たれる事はなかった。
今まで背後から俺をついていた明彦のブツが一気に俺の中から抜け出たのだ。
「っひぁ…」
「アッキー、ミキが出てってって言ってるから出てってー。ミキィ、ずっと待ってたよ!俺我慢できなくてアッキーとしてたけど、やっぱミキが一番だっわー!」
畜生!勝手な事ばっかいいやがってコイツ!
……はぁ、もういいよ。
明彦にはセックスに関しては何言っても通用しないと、ここ数日で身を持って理解したからな。
俺はケツから流れ出る、生温かい嫌な感触に眉を潜めると、素早く周りに落ちていた服をかき集めて立ちあがった。
クソ、腰も痛いな……まぁ久しぶりだったからな。
俺は疲れ切った気分で幹夫の横を通り抜けると、幹夫の隣を通った瞬間小さな声で「ごめんな」と呟いた。
ごめんな、でも俺は二人の仲をどうこうしたいわけじゃないんだ。
本当なんだ。
でも、もうその時の俺は事情を説明するだけの力は残っていなかった。
とりあえず……落ち着きたい。
俺はフラフラとした足取りで部屋をでて、後ろ手にドアを閉めた。
幹夫はきっと俺を嫌いになっただろう。
あんなシーンに出くわしてしまったら仕方がない。
しかも、あいつら多分今からヤっちゃうんだろうなぁ。
幹夫、お前はまだ休んでないといけないのに……。
けど、それはさすがに今の俺では絶対言う事ができない。
………ここはもう大人しくしておくしかない。
俺はフラフラとする体を支える事ができず、いつものソファの前でヘタリと腰を下ろした時だった。
俺は微かに視界に映ってきたカレンダーに一瞬にして目を奪われた。
「そういや……今夜からゼミ合宿じゃん……」
畜生、マジで幹夫の看病やら明彦の監視やらですっかり忘れていた。
うーわ、行きたくねぇ。
腰痛いんだけど……ほんと。
しかも、金ないからっつって移動が夜行バスなんだよな。
マジふざけんなだよ。
「でも、これ行かないと単位がなぁ……」
俺は必修科目であるゼミの単位と、今の疲れを天秤にかけると、すぐさま単位の方が重要だと結果をはじき出した。
だってこの単位とらねぇと、結局卒業できないし。
って、事は今から風呂入って旅行の準備……だな。
まぁ、唯一の救いが合宿先が別府だって事か。
温泉たくさんあるだろうし、ゆっくりしてこよう。
幹夫と明彦も、しばらく俺の顔は見たくないだろうし丁度いいな。これは。
俺はそそくさと旅行の準備に取り掛かると、部屋から聞こえてくる、何故かいつもより激しい嬌声に、小さくため息をついた。
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