どうしてこうなった 優しい関係:上 ---------------- 午後11時。 今日は珍しく部屋から騒がしい喘ぎ声は聞こえてこない。 その理由は……… 「明彦、大丈夫かー?」 「うぅ……らいじょうぶじゃない」 「返事できれば十分大丈夫だ」 明彦が熱を出した。 理由は、冬のこの寒い時期に布団を蹴飛ばして真っ裸で寝ていたからという、かなりアホな理由で、だ。 まったく、ヤる事ばっか考えてっからそんな事になるんだよ。 ばーか。 俺は久しぶりに入る己の寝室だった部屋へ、薬とお粥を持って入ると、ベットの脇の棚に置いた。 「明彦……、大丈夫か?」 明彦のベットの隣では、幹夫が心配そうに明彦の額のタオルを代えてやっている。 美少年からの献身的な看護か、羨ましい限りだな、明彦は。 「ほら、明彦。粥と薬もってきてやったから、少し食べろ」 「くすりやだー」 「やだじゃない。ほら、起きろ」 俺が明彦の体を持ち上げて、上体を起こそうとすると、チラリと視界に映った幹夫に伸ばしかけた己の手をひっこめた。 幹夫のヤツ、すげぇ俺の事睨んでる。 ………いやはや、ほんとにお前も明彦の事が大好きだな。 「幹夫、悪いな。ほら、こっからはお前が看病してやってくれ」 「え、……あ、うん」 俺が薬とお粥の乗ったおぼんを幹夫へと回すと、幹夫は一瞬戸惑ったような表情でおぼんを受け取った。 「ミキィ、食べさせてー」 「………うん、明彦、じゃ、起きて」 「このままでいいじゃん。なぁ、ミキが口移しで食べさせてよ」 「っおい!明彦!」 明彦の言葉に幹夫は焦ったような表情を作ると、チラリと俺の方を見てきた。 あー、はいはい。 わかった、わかった。 お邪魔者は出て行きますよー。 「じゃ、後はよろしくな。幹夫」 いつヤり出すともしれない二人の雰囲気に、俺はすぐに立ち上がるとさっさと部屋を出て行った。 なんか、後ろで幹夫が何か俺の名前を叫んでいるようだが……まぁ、嫌よ嫌よも好きのうちってうやつだろう。 つーか、それにしても幹夫のヤツ、今さら口移しくらいで何を焦っているのだろうか。 しょっぱな、激しく明彦と絡み合ってたあのシーンを見られても何の動揺もしていなかった癖に、今さら何が恥ずかしいというんだ……まったく幹夫の価値観はわかんねぇな。 そんな事を考えながら、俺は一人リビングで遅い夕食にありついた。 さっき、明彦に持って行ったお粥の残りだ。 今日は、明彦の世話やらバイトやらで昼も抜かしてるから、凄い勢いでお腹がすいている。 俺はもそもそ残りのお粥を食べ終わると、食べ終わった食器を洗い、軽くシャワーを浴びた。 そうやって、いろいろ行動しながら、寝室から一向にいつもの喘ぎ声が聞こえてこない事が若干気になった。 俺が部屋を出たら、即お粥プレイだのナースプレイだのやらかすもんだと思っていたので、こんなに静かだと逆に少し心配だ。 「アッキー」 「うわぉ!?」 俺が丁度髪を乾かしながら、幹夫達の事を考えていると、背後から幹夫の声が聞こえた。 ヤベぇ、マジでビビった。 「……そんなに驚かなくてもいーじゃん」 「や、ごめん。なんかリアルにビビってしまった」 俺がドライヤーを止めて振り返ると、そこには空になった皿を持つ、幹夫の姿があった。 「お、なんだ。普通に食べ終わったのか」 「うん、明彦なら今部屋でぐっすり寝てるよ。ってか普通にって何だよ」 「いやぁ、お前らの事だから、俺の作ったお粥であられもないプレイでもやんのかなぁと思ってたから」 「ふざけんな!んな事するかよ!?」 「……そんなに怒んなよ、冗談だって」 いや、マジで思ってたけど。 俺は結構マジで怒っている幹夫の機嫌を直そうと、幹夫の手にある空の皿を受け取ると、幹夫の背中を押してソファまで誘導した。 「悪かったって。お前、マジで明彦の事心配してたんだもんな?」 「…………」 「ほら、ごめん。機嫌直せよ。カフェラテ作ってやるから。ソファにでも座ってな」 「………うん」 俺は未だにむくれっぱなしの幹夫をソファに座らせると、急いで食器を洗い、手早くカフェラテを作った。 そこで、キッチンから見える幹夫を見ながら俺はふと思った。 そういや、今日は幹夫はどこで寝たらいいのだろうか。 いつもは寝室で明彦と二人仲良くまぐわっていらっしゃるので問題はないが、今日は別だ。 さすがに風邪をひいている人間の隣になど、寝かせられない。 ましてや、幹夫は受験生だ。 ………そうだ、コイツ受験生だった! ああもう、先程まで部屋に居させたのもやっぱり間違いだった。 いくら、幹夫が嫌がっても、俺があそこは世話をしてやるべきだったな。 もうすぐセンターとかあるし、幹夫は今一番体を大事にしなきゃならない。 とりあえず、幹夫は今日はソファで、あったかくして寝てもらうか。 ……俺は…、まぁ床で寝ても問題ないだろ。 受験生じゃねぇし、 体丈夫だし。 俺はそう結論付けると、出来上がったカフェラテを持って、未だに少し機嫌のよろしくない幹夫の元へと向かった。 [*前へ][次へ#] |