どうしてこうなった
応援する関係
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カツカツカツ
「う、ん………あぁ?」
俺はどこからともなく聞こえてくる聞き慣れない音に、薄く目を開いた。
部屋は真っ暗……ではなく、リビングの机の上だけ、微かに光がともされている。
俺は微かに部屋をともす光に目をくらませながら、しばらくソファに横になった状態で目が慣れるのを待った。
カツカツカツカツ
聞こえてくるのは、ベットの軋む音でも、喘ぎ声でもなく、何かをシャーペンを走らせる小さな音。
なんだ、俺は喘ぎ声ではグッスリ眠れるくせに、こんな小さな音で起きてしまうのか。
それってどうなんだ。
なんかおかしくないか、俺の耳。
つーか、こんな時間に誰だよ、一体。
俺は明るさに慣れた目で時計へと目をやると、その針は既に夜中の3時を指していた。
そして、その拍子に見えてしまった。
リビングの椅子に一人座って何かをしている人物が。
「…………ぁ?」
幹夫?
俺はハッキリとその姿を認識すると、ソファから体を起こした。
「………おい、幹夫」
「………あ?アッキー?」
静かな部屋には意外と響く普通の音量の声に、俺は今が本当にあの毎晩うるさかった俺の部屋かと一瞬疑いそうになった。
だが、当たり前な事に、確かにそこは俺の部屋で、そして机からこちらを見ているのは確かに幹夫だった。
「何やってんだ?こんな時間に」
「…ま、…ちょっとね」
「ちょっとって事はないだろ……よいしょっと」
俺はソファの上から布団をどかすと、幹夫の居るリビングの机の置いてある場所へと向かう。
そんな俺に、幹夫は少しだけ眉をひそめ小さくため息をついた。
「別に、宿題やってるだけだから」
「宿題?こんな時間に?」
俺が幹夫の座る向かい側の席へと座ると、確かに机の上には高校の参考書や教科書が机いっぱいに広げられていた。
「こんな時間しか宿題する時間がないだよ」
「………そりゃあ、お前が毎晩毎晩やりまくってるからだって」
「何それ、嫉妬?」
「だから、誰に対する嫉妬だっつーの」
俺が以前も同じようなやりとりをやったなぁと、デジャビュを感じながらそう答えると、何故だか幹夫は少し悲しそうな顔で俺の顔を見てきた。
何だ?
最近よくこんな表情をするが、本当に幹夫はどうしたのだろうか。
マジで明彦と上手くいってないのかもしれない。
幹夫は結構常識人な感じだからな。
明彦のワガママに付いていけないのかもしれない………わけないか。
明彦が無茶言う相手って俺しかいないし。
まぁ、とりあえず何か元気なさげだ。
こんな時間にセックス終えたクタクタな体で宿題やってりゃあ、確かに元気も無くなりそうではあるが。
「そういや、幹夫は今年受験生だもんな。勉強、大変だろ?」
「まぁ、ね。………行きたい大学も決まったし。後は頑張るだけって感じかな」
「お、決まったのか。大学。どこ?」
「言わないし」
「……そうかい」
即答かよ。
ケチだな、コイツ。
教えてくれたっていいだろ、普通。
「目標決まったら、なんていうか……もっと頑張らないといけないってわかってね。悪いけど、これから夜電気つけちゃうからな」
「いいよ、別に。つーか。もうガッツリ電気つけるならつけろよ。目悪くなるぞ」
俺は言いながら、薄くついていた電気を一番明るい明りに変えた。
このくらいじゃないと勉強もし辛いだろ。
変なところで気使いやがって。
「………ごめん、寝にくくなったな」
「いいよ、別に。俺、電気とか気にならねぇし。お前こそ、あんまり根詰めんなよ。体壊したら意味ねぇし」
「………うん」
本当は、少しヤる回数減らして睡眠にまわした方がいいんだろうが、そんな事言ったってコイツがそんな忠告を聞かない事は百も承知だ。
むしろ嫉妬してんだろ、とか明彦の事まだ狙ってんだろとか、あらぬ疑いをかけかねられない。
別にんな心配しなくても、明彦が幹夫に夢中なのは明らかなのにな。
俺は今までずっと明彦と居るが、あそこまで幸せそうな明彦は初めてだ。
本当に明彦は幹夫が大好きで仕方ないってのが見てるだけで伝わってくる。
幹夫はもう少し明彦に対して自信を持っていいのにな。
変な奴だよ、ほんと。
「ねぇ、アッキー」
「んー?」
「俺、ちょっと疲れたからさ……アレ作ってくれるか」
「……あー、あれな。いいよ。そうだな、お前もちょっと休憩した方がいいだろうし、ちょっと待ってろよ」
俺はそう言うとキッチンに足を運び、戸棚からカップを取りだした。
そう、幹夫の言う“アレ”と言うのは、以前作ってやった俺特性ハニーカフェラテだ。
あれ以来、幹夫は何かあるたびに俺にハニーカフェラテをせがむようになった。
まぁ、ホットが合う季節になってきたし、勉強の合間にはとっておきかもしれない。
これくらいしかできないけど、幹夫には受験成功してほしい。
「ほらよ」
「……ありがと」
「なぁ、幹夫」
「何、アッキー」
「あんま無理すんなよ」
「………うん」
その時、俺の目を見て小さく頷いた幹夫は、なんだか今まで見てきた幹夫とは少しだけ違う気がした。
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